木村俊一氏の「QNA:Queuelng Network Analyzer について(3)」から

昨日の「Word Whitt: The Queueing Network Analyzer(4)」のところに関連して

を参照すると、こんなことが書かれています。

6.1 単一窓口ノード
 この節では、窓口数m=1のノードについて、その待ち特性量を近似解析する。定常状態における客の待ち時間をWで表すことにする。QNAでは、その平均EWについては、次の近似式を用いている。

	EW=\frac{(c_a^2+c_s^2)\tau\rho{g}}{2(1-\rho)}			(6.1)

ただし、

	g{\eq}g(\rho,c_a^2,c_s^2)
	=\left\{{\exp\left\{-\frac{2(1-\rho)}{3\rho}\frac{(1-c_a^2)^2}{c_a^2+c_s^2}\right\}\text{ c_a^2<1}\atop{1}\text{                             c_a^2{\ge}1}}		(6.2)

(6.1)は、重負荷近似(heavy traffic approximation)*1にもとづく項に修正項gを乗ずる形をしており、c_a^2<1のとき、GI/G/1待ち行列の平均待ち時間に対するKraemer & Langenbach-Belz*2の近似(KL近似と略す)と一致する。c_a^2{\ge}1のときには、KL近似における複雑な式で表される修正項が、それほど精度の向上に寄与していないことが判明したため、g=1を用いている。この場合、(6.1)は、GI/G/1待ち行列に対するSakasegawa
*3、Yu*4の近似式と一致する。

(6.1)に(6.2)のc_a^2{\ge}1の場合、すなわち

  • g=1

を代入すると

  • EW=\frac{(c_a^2+c_s^2)\tau\rho{g}}{2(1-\rho)}=\frac{(c_a^2+c_s^2)}{2}\frac{\rho}{1-\rho}\tau

となって、Kingmanの式に一致します(Factory Physicsで登場した式とは使用している変数名が異なりますが)。ところが(6.1)自体、注によればKingmanの論文で導出されているようです。私には複雑怪奇に思えます。一方(6.1)に(6.2)のc_a^2<1の場合、

  • g=\exp\left\{-\frac{2(1-\rho)}{3\rho}\frac{(1-c_a^2)^2}{c_a^2+c_s^2}\right\}

を代入しても複雑な式のままであり、私の手に負えません。
脇道せずにWhitt教授の「The Queueing Network Analyzer」の翻訳を進めていったほうがよさそうです。

*1:Kingman, J. F. C., 「重負荷時の単一サーバ待ち行列」Proc. Camb, Phil. Soc., 57, 902-904 (1961).

*2:Kraemer, W. and M. Langenbach-Belz,「待ち行列システム GI/G/1における遅れの近似公式」Proc. 8th International Teletraffic Congress, pp.235-1/8, Melbourne, 1976.

*3:Sakasegawa, H., 「近似公式 Lq{\app}{\alpha}{\cdot}\rho^{\beta}/(1-\rho)」Ann. Inst. Statist. Math., 29, Part A, 67-75 (1977).

*4:Yu, P. S., 「拡散近似の精度向上と適用条件およびコンピュータ・システムのモデル化への適用について」Tech. Rep. No.129, Digital System Laboratory, Stanford University, 1977.