待ち行列ネットワークへの助走

迷走(2)

同じ装置構成で、同じ製品を製作する2つの工場を考えます。そして、その工場に材料を投入するタイミングは2つの工場で同じであるとします。片方の工場(工場1とします)ではどのステーションについてもその前のバッファの容量は制限しないようにします。…

迷走(1)

私がここずっと考えていたのは、工場のあるステーション(=装置群)の前のバッファの容量を制限した場合に、工場全体のWIPにどのような影響があるか、というものです。バッファ容量を制限したことにより工場全体のWIPは減るでしょうか? このようなこ…

有限容量バッファの挙動の解析(2)

「有限容量バッファの挙動の解析(1)」の最後の式 ・・・・(42) は、2番目の工程の前にバッファがない下図 図9 のような工場のスループットの最大値を表わしています。そのことをはっきり表わすために式(42)の左辺のをと書くことにします。つまり ・・・…

有限容量バッファの挙動の解析(1)

「有限容量のバッファの場合は解析が難しい」では、 図9 のような2番目の工程の装置の前のバッファが有限(この場合はゼロ)の場合の工場の挙動の解析が難しい理由を述べました。しかし難しいと言って手をこまねいているわけにはいきません。少しでも挙動…

有限容量のバッファの場合は解析が難しい

「無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(3)」の続きです。 図1 図1の特殊な場合として図9 図9 のように2番目の装置(=装置B)の前にバッファがまったくない場合を例として取り上げます。これからの説明は、2番目の装置の前に有限のバッフ…

無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(3)

「無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(2)」の続きです。 「無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(2)」の最後の式(13) ・・・・(13) は面白い形をしています。式(13)を ・・・・(14) のように変形すると、の部分は稼働率のM/M/…

無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(2)

「無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(1)」の続きです。 「無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(1)」の最後で 図6 という状態遷移図をお見せしました。ここから各状態の確率を計算するのは一見難しそうに見えますが、実はそれほ…

無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(1)

「なかなか工場統計力学の筆が進まないわけ」では 図1 に示すような有限容量のバッファが工程間にある場合の工場の解析が難しい、ということを書きました。どのようにそれが難しいのかを説明するために、 図2 に示すようにバッファが全て無限容量の場合に…

クローズド・ネットワークまとめ

クローズド・ネットワークのスループットとサイクルタイムの関係を求める試みは、私の力量では残念ながらここでストップしてしまいます。つまり、「クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(1)〜(4)」までが到達点です。工場内…

クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(4)

「クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(3)」の続きです。今度は式(3) ・・・・(3) が成り立つ理由について調べます。 単位時間あたりステーション内のジョブ数がからに変化する回数の平均値と、単位時間あたりステーション内の…

クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(3)

「クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(2)」の続きです。今度は式(2) ・・・・(2) が成り立つ理由について調べます。 このネットワークで、各ステーションでジョブが処理されたら一旦、ネットワークの外に出るものと考え直しま…

クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(2)

「クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(1)」の続きです。では、なぜこの方法でサイクルタイムを求めることが出来るのか、見ていきます。ところで Manufacturing Systems Modeling and Analysis Manufacturing Systems Modeling…

クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(1)

Manufacturing Systems Modeling and Analysis Manufacturing Systems Modeling and Analysis作者: Guy L. Curry,Richard M. Feldman出版社/メーカー: Springer Verlag発売日: 2009/03/01メディア: ハードカバー クリック: 19回この商品を含むブログ (14件) …

平均値解析法(3)

「平均値解析法(2)」の続きです。 これらのことから、平均値解析法を組み立てることが出来ます。 1. まずの場合を考えます。この場合、どのステーションでも待ち時間が発生しないので、各ステーションでのサイクルタイム を容易に求めることが出来ます…

平均値解析法(2)

「平均値解析法(1)」では ・・・・(2) が言えました。 次にリトルの法則から、ネットワーク内にジョブ数がの場合のステーションでのスループットをで表すと ・・・・(3) となります。式(3)を式(2)に代入すると ・・・・(4) となります。 式(4)から次のこ…

平均値解析法(1)

平均値解析法(MVA:Mean Value Analysis)について私はこのブログで以前説明したつもりでいましたが、確認してみると「6.4.2.クローズドモデル解法:Quantitative System Performance」で、コンピュータ・システムへの適用を前提にした記事を和訳して紹…

クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(4)

「クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(3)」の続きです。 定理1 ネットワーク全体でジョブが個ある場合に、ステーションからステーション1にジョブが到着する際、そのジョブが見る状態がである確率とである確率の比は、ネットワーク全体でジョブが…

クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(3)

「クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(2)」の続きです。 ・・・・(12) でした。また、 ・・・・(7) でした。 状態とは間に状態を考えると、は状態よりステーションのジョブが1個多い状態、は状態よりステーションのジョブが1個多い状態、と見る…

クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(2)

「クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(1)」の続きです。 式(7) ・・・・(7) では状態とを考えていますが、この2つの状態でのジョブの数は同じです。ここでちょっと、ネットワーク全体のジョブの数について注意を払っておきましょう。状態の時のネ…

クローズド待ち行列ネットワークの到着定理(1)

ここでは「クローズド待ち行列ネットワークの基礎」で用いた記法を使用します。 状態に比べてステーションだけジョブ数が1個多いネットワークの状態をで表すことにします。つまり、との各ステーションのジョブ数をそれぞれとで表すとすると、 の場合 の場合…

クローズド待ち行列ネットワークの基礎

クローズド待ち行列ネットワークでは、ジョブの到着は外部から与えられることはないので、到着分布を指定することはありません。クローズド待ち行列ネットワークを構成する各ステーションへのジョブの到着は、他のステーションからの出発過程として、あるい…

CONWIPとクローズド待ち行列ネットワーク

CONWIPという工場運用方針は、「CONWIP」というエントリーに書いたとおり、工場内のWIPを一定に保つ運用方針です。つまり、工場から完成品が1つ工場外に出るたびに、新しい材料を工場に投入する方針です。工場の最終工程のステーションから…

QNAに対する疑念再考

「QNAに対する疑問」についてもう一度、考えます。 「再生過程の重ね合わせの変動係数の計算について」で述べた再生過程を重ね合わせた過程の変動係数の計算式 ・・・・(2) ただし ・・・・(3) ・・・・(4) をどうやってWhitt教授は導き出したかですが、W…

再生過程の重ね合わせの変動係数の計算について

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QNAに対する疑問

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Quantitative System Performance和訳 pdf版

pdf版。またの名を「My Open Archive版」という。 原著はこちらです。 Quantitative System Performance; Computer System Analysis Using Queueing Network Models;Edward D. Lazowska, John Zahorjan, G. Scott Graham, Kenneth C. Sevcik 目次 前書き I…

Quantitative System Performance翻訳完了

昨日で、 Quantitative System Performance; Computer System Analysis Using Queueing Network Models;Edward D. Lazowska, John Zahorjan, G. Scott Graham, Kenneth C. Sevcik (定量的システム性能。待ち行列ネットワーク・モデルを用いたコンピュータ・…

19.2.プログラム:Quantitative System Performance

「19.1.導入」の続きです。(目次はこちら) 19.2.プログラム プログラムは以下の4ページに現れる。2つのステートメント・ラベル(2001と2003)は第20章での参照のために含まれており、プログラムでは使用されない。 若干のFortran実装はフォーマットさ…

19.1.導入:Quantitative System Performance

「18.2.プログラム」の続きです。(目次はこちら) 19.1.導入 この附録で我々は、全部がキューイング・センターからなり、3つのバッチ・タイプのクラスを含む分離可能待ち行列ネットワーク用の厳密平均値解析アルゴリズムのFortranによる実装を提供する。 …

第19章 複数クラス、厳密MVAの実装:Quantitative System Performance

19.1.導入 19.2.プログラム 第18章 単一クラス、厳密MVAの実装へ 第20章 負荷依存サービスセンターへ パートVI.付録へ