2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(11):シゲイオンのゆくえ

さて、アテナイがシゲイオンを占領したために、ミュティレネは近くのアキレイオンに植民市を建て、そこに軍を置いて、アテナイ勢との小競り合いを続けていました。ところで、このアキレイオンというところは、ここにトロイア戦争でのギリシア側の英雄だった…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(10):アルカイオス

サッポーより10歳程度年下なのが詩人のアルカイオスでした。この人の詩も今まで読んだことがなかったのですが、今回、調べたところどうも「荒々しい」詩のようです。 アルカイオスの戦争と政治体験は現存する詩の中に反映されていて、その中でも断然多いのが…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(9):オルペウスの竪琴

サッポーまで話を進めたのに、歴史時代からまた神話伝説の時代に戻ってしまうのですが、ここでオルペウスとレスボス島にまつわる伝説を紹介したいと思います。なぜレスボス島には芸術家が輩出するのか、といういわれを説く話です。ミュティレネにはサッポー…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(8):サッポー

(左:ローレンス・アルマ=タデマ画 『サッポーとアルカイオス』の部分) ピッタコスより10歳程度年下であったのが詩人のサッポー(サッフォーとも呼ばれます)でした。サッポーは古代ギリシアの有名な詩人の一人で、のちの時代のことですが、哲学者のプラ…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(7):ピッタコス

ミュティレネの王位を独占していたペンティリダイ一族はやがて勢力が衰え、BC 7世紀頃には他の貴族たちと抗争するようになったようです。ペンティリダイについてはなかなか情報がないのですが、アリストテレスの政治学に断片的にある以下のような記述は、背…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(6):ペンティリダイ(ペンティロスの子孫)

次に述べなければならないのは古代ギリシア史において現在では暗黒時代と呼ばれている資料のない時代です。この時代の出来事を私は何とか述べたいと思うのですが、なかなか手がかりが見つかりません。例えばミュティレネは小アジアとは海を隔てていますので…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(5):ヘレスポントスの確保

さて、アルゴ号の出航という幸福な場面でこの物語から離れ、レスボス島やその東岸にあるミュティレネに戻りましょう。 前にもお話ししましたように、伝説によればアルゴ号はレスボス島にはやってきませんでした。レスボス島と名前の似たレムノス島には寄航す…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(4):アルゴー号の冒険

アルゴー号の冒険の物語の基本的な構造は、娯楽物語の王道を押さえています。つまり、イアーソーンという男が、この世の果て(当時のギリシア人にしてみたら黒海東岸のコルキスはこの世の果てと感じたことでしょう)にあるという宝物を手に入れるため、仲間…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(3):アイオリス人の到来

ミュティレネのあるレスボス島は、トロイア戦争の頃はギリシア人が住んでいないようでした。では、ギリシア人がレスボス島にやってきた時の様子が何か伝承に残っているでしょうか? 高津春繁の「ギリシア・ローマ神話辞典」で調べたところ、断片的で異説の多…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(2):トロイア戦争の頃

まずギリシアの文学の最古のものとされているホメロスの叙事詩、イーリアスとオデュッセイアーから検討していきましょう。これらの叙事詩にはミュティレネの名前は登場しなかったと思います。では、もう少し範囲を拡げて「レスボス島」が登場するかどうかを…

エーゲ海のある都市の物語:ミュティレネ(1)

ミュティレネ(現代の発音ではミティリーニ)は、エーゲ海に浮かぶ島レスボスの都市で、古代ギリシアの時代にもこの島のすでに主要な都市でした。 紀元2世紀頃のローマ帝国の時代の小説「ダフニスとクロエー」の冒頭にはミュティレネの町の叙述があります。 …

古代ギリシアの旅

古代ギリシアの旅―創造の源をたずねて (岩波新書)作者: 高野義郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/04/19メディア: 新書 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見るこの本は、素粒子物理の専門家がギリシアの遺跡を訪ねて紹介するという異色の本…

ミレトスに関する追記

古代ギリシアの旅―創造の源をたずねて (岩波新書)作者: 高野義郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/04/19メディア: 新書 クリック: 3回この商品を含むブログ (4件) を見るこの本を読んでいたら、ミレトスについて重要な記述があったので引用します。 と…