2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(22):ミレトス陥落ののち

サルディスから逃走してからのヒスティアイオスの行動は、その目的が私には理解出来ません。逃亡したことによってペルシアに敵対することを決意したと思ったのですが、やったことといえばビザンティオン(今のイスタンブール)を根拠地にして、海賊家業にい…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(21):ミレトスの陥落

さて、ペルシア海軍の主力であるフェニキア艦隊がイオニア軍に接近し、戦いの火蓋が切られました。ヘロドトスは、どの町の部隊が奮戦し、どの町の部隊が戦わずに逃走したのかを述べていますが、肝心のミレトス部隊がどう戦ったのかについては、なぜか述べて…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(20):ペルシア軍の包囲

ヒスティアイオスがキオス島に渡ると、ダレイオスの覚えめでたい人物がキオスに来たというわけで、これは何か陰謀を企んで来たに違いないとキオス人に勘ぐられ、逮捕されました。ヒスティアイオスは自分はダレイオスから逃げてきたのだ、と必死に説明してな…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(19):アリスタゴラスの逃亡

ヒスティアイオスが歩いて3ヶ月はかかるスサからサルディスへの長い道のりを進んでいっているうちにも、イオニアでの情勢も変化していきました。サルディスとエペソスでの戦いの次には、キュプロスでペルシアへの反乱が起りました。反乱軍の首謀者はキュプ…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(18):サルディスとエペソスでの戦い

何の抵抗も受けずにサルディスを占領したイオニア軍とアテナイ軍でしたが、 兵隊の一人が一軒の家に火を附けたところ、火は忽ち家から家へ移り、町全体が猛火に包まれてしまった。町の燃えている中に、リュディア人および町にいたペルシア人はことごとく、四…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(17):サルディスへ

アリスタゴラスはペルシアへの反乱の意志を自分の仲間たちに打ち明けました。また彼は、ヒスティアイオスから来た指令についても明かしました。その仲間の中には歴史家ヘカタイオスもいたということです。他の者たちが皆、反乱に賛成する中でヘカタイオスだ…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(16):イオニアの反乱のきっかけ

当時、ミレトスは繁栄を謳歌しておりましたが、ナクソスという島も他の島々にぬきんでて繁栄しておりました。ナクソスはエーゲ海に浮かぶ島々の中でキクラデス諸島と呼ばれる諸島の中の最大の島です。ミレトスはペルシアの支配下にありましたが、ナクソスは…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(15):「イオニアの華」の時期

ミレトスの支配権を得ており、さらに今回ミュルキノスに町を建設する許可をもらったヒスティアイオスは喜んでミュルキノスの城壁の建設を始めました。ところがそのことを聞いたペルシアの将軍メガバゾスがダレイオス王にこう進言しました。 「王よ、とても一…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(14):ダレイオスの退却

スキュタイ人の言う通り、橋を破壊してイオニアを解放しようと主張したのはケルソネソスの僭主ミルティアデスでした。ケルソネソスは今のガリポリです。 一方、それに反対したのはミレトスの僭主ヒスティアイオスでした。 自分たちがそれぞれ自国の独裁権を…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(13):ドナウ河の船橋

ここからしばらくは話の舞台はエーゲ海を離れて黒海の沿岸近く、ドナウ河の水が黒海に注ぎ込むあたりを少し上流に行ったあたりになります。当時、このドナウ河の北側がスキュタイ人の領土なのでした。ペルシア王ダレイオスは陸軍を率いて、ボスポラス海峡に…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(12):ヒスティアイオスの登場

「ミレトス(7):トラシュブロス後」で述べましたように、ミレトスは2世代(おそらく60年)に渡る内紛の後にパロス島の住民によって一種の財産政(財産の多い者が政権を握る政治制度)が成立したのではないか、というのが私の推測でした。しかし、遅く…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(11):イオニア文化の拡散

サルディスの陥落があり、その後のペルシア王国によるイオニア地方平定において2つの町の住民だけが祖国を離れました。テオスの町では全市民が船に乗り込み、海路トラキア(現在のギリシア北東部)に向い、そこにアブデラという町を建てました。ヘロドトス…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(10):サルディスの陥落

話を「ミレトス(6):イオニア12都市」のところまで戻します。ミレトスはリュディアと同盟を結んでいたことで対外的には平和を得ていたのですが、やがて情勢が変化していきます。その変化は東方はるかかなたのイラン高原からやってきました。イラン高原…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(9):科学者タレス

実は私は今、述べる順番を間違えてしまった、と思っています。しかし、タレスに関する逸話としてこれも紹介しておかねば、と思いもあって、全体の構成(一応、そういうものを考えているのです)を乱すとも感じてはいるのですが、アリストテレスが伝えるこの…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(8):タレスと鼎

ディオゲネス・ラエルティオスはタレスにまつわるこんな話を記しています。 イオニアのある若者たちがミレトスの漁夫たちから、彼らの水揚げした漁獲物を買ったとき、引き上げられたもののなかに鼎があったので、それをめぐって争いが起った。そこでミレトス…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(7):トラシュブロス後

さてこの頃、ミレトスの独裁者トラシュブロスはどうしていたのでしょうか? 残念ながらそれについての記述を私は見つけることが出来ていません。彼には後継者がいたのか、それとも後継者はおらず、民主政が確立したのか、それとも貴族政になったのか、興味が…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(6):イオニア12都市

ミレトスはリュディアと同盟を結んだおかげで、他のイオニア都市とは異なり、独立を保つことが出来ました。リュディア王が次の代のクロイソスになった時、クロイソスはいろいろと口実を設けて他のイオニア都市を征服してしまいましたが、その時もミレトスに…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(5):僭主トラシュブロス

キンメリア人とスキュタイ人がリュディアから追い出されたのち、リュディア王国はミレトスへの侵攻を再開しました。この時のミレトスの支配者はトラシュブロスでした。 彼*1がミレトスに軍を進め、これを攻囲した遣り方は次のようであった。田畑に穀物が実る…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(4):科学の祖タレス

さて、次の出来事は、キンメリア人やスキュタイ人をリュディア王国の領土から放逐したあとの出来事なのか、それともまだ放逐出来ていなかった頃の出来事なのかよく分からないのですが、リュディアの首都サルディスに保護を求めてきたスキュタイ人の処遇をめ…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(3):キンメリア人の侵入

リュディア王国が領土を拡張してきてミレトスを占領しようと、さかんに戦争を仕掛けるのですが、その時にミレトスがどう対処したのかについて、その初期のことは分かりません。これらはいわゆる暗黒時代の出来事なのです。いっとき、リュディアがミレトスや…

エーゲ海のある都市の物語:ミレトス(2):ミレトス建設

昨日は、古代ギリシアの時代にミレトスという都市がどうやって建設されたのか、というミレトスの起源に関わる伝説を集めてみたのですが、そこからぼんやりと見えてくるのは「アテナイ(=現代のギリシアの首都アテネと同じ)王コドロスの息子のネイレオスま…