バランスのとれた平均を持つ超指数分布

いくつかの指数分布の加重平均した分布を超指数分布と言います。ここでは2つの指数分布の加重平均になる超指数分布を考えます。

  • f(t)=p\gamma_1\exp(-\gamma_1t)+(1-p)\gamma_2\exp(-\gamma_2t)・・・・(1)
  • ただし

これは平均

  • \frac{1}{\gamma_1}

の指数分布

  • f_1(t)=\gamma_1\exp(-\gamma_1t)

と、平均

  • \frac{1}{\gamma_2}

の指数分布

  • f_2(t)=\gamma_2\exp(-\gamma_2t)

の加重平均になっています。
バランスのとれた平均を持つ超指数分布は、さらに、両者の重み付けられた平均が等しいという条件を満たす超指数分布です。すなわち

  • p\frac{1}{\gamma_1}=(1-p)\frac{1}{\gamma_2}・・・・(2)

このようなバランスのとれた平均を持つ超指数分布の平均と分散、2乗変動係数を求めてみます。

バランスのとれた平均を持つ超指数分布が正規化されていることの確認

上の(1)の分布に従う確率変数をTで表わします。まずこの分布が規格化されていることを確かめます。

  • \Bigint_0^{\infty}f(t)dt=p\Bigint_0^{\infty}\gamma_1\exp(-\gamma_1t)dt+(1-p)\Bigint_0^{\infty}\gamma_2\exp(-\gamma_2t)dt=p+(1-p)=1

これで(1)が規格化されていることが確かめられました。

バランスのとれた平均を持つ超指数分布の平均

次に平均E(T)を求めます。

  • E(T)=\Bigint_0^{\infty}tf(t)dt=p\Bigint_0^{\infty}t\gamma_1\exp(-\gamma_1t)dt+(1-p)\Bigint_0^{\infty}t\gamma_2\exp(-\gamma_2t)dt
    • =p\frac{1}{\gamma_1}+(1-p)\frac{1}{\gamma_2}

ここで(2)を考慮すれば

  • E(T)=2p\frac{1}{\gamma_1}

ここから

  • \gamma_1=\frac{2p}{E(T)}・・・・(3)

(3)を(2)に代入して解けば

  • \gamma_2=\frac{2(1-p)}{E(T)}・・・・(4)

バランスのとれた平均を持つ超指数分布の分散、2乗変動係数

次に分散Var(T)を求めるためにまずE(T^2)を求めます。

  • E(T^2)=\Bigint_0^{\infty}t^2f(t)dt=p\Bigint_0^{\infty}t^2\gamma_1\exp(-\gamma_1t)dt+(1-p)\Bigint_0^{\infty}t^2\gamma_2\exp(-\gamma_2t)dt
    • =p\frac{2}{\gamma_1^2}+(1-p)\frac{2}{\gamma_2^2}

ここで(3)(4)を代入すると

  • E(T^2)=p\frac{2E(T)^2}{4p^2}+(1-p)\frac{2E(T)^2}{4(1-p)^2}=\frac{E(T)^2}{2}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{1-p}\right)

よって

  • E(T^2)=\frac{E(T)^2}{2}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{1-p}\right)・・・・(5)

よって分散Var(T)

  • Var(T)=E(T^2)-E(T)^2=\frac{E(T)^2}{2}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{1-p}\right)-E(T)^2=\frac{E(T)^2}{2}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{1-p}-2\right)

よって

  • Var(T)=E(T^2)-E(T)^2=\frac{E(T)^2}{2}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{1-p}-2\right)・・・・(6)

ここから2乗変動係数c^2

  • c^2=\frac{Var(T)}{E(T)^2}=\frac{1}{2}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{1-p}-2\right)

よって

  • c^2=\frac{1}{2}\left(\frac{1}{p}+\frac{1}{1-p}-2\right)・・・・(7)

です。これをpについて解くと

  • 2c^2p(1-p)=1-p+p-2p(1-p)

よって

  • 2c^2p-2c^2p^2=1-2p-2p^2
  • 2(c^2+1)p^2-2(c^2+1)p+1=0

よって

  • p=\frac{2(c^2+1){\pm}\sqrt{4(c^2+1)^2-8(c^2+1)}}{4(c^2+1)}

よって

  • p=\frac{1}{2}\left[1{\pm}\sqrt{\frac{c^2-1}{c^2+1}}\right]

また

  • 1-p=\frac{1}{2}\left[1{\mp}\sqrt{\frac{c^2-1}{c^2+1}}\right]

よって上の式でプラスを採用してもマイナスを採用してもp1-pが入れ替わるだけなので、ここでは便宜的にプラスを採用することにします。

  • p=\frac{1}{2}\left[1+\sqrt{\frac{c^2-1}{c^2+1}}\right]・・・・(8)

式(8)から分かるようにc^2{\ge}1、すなわちc{\ge}1でなければなりません。バランスのとれた超指数分布の変動係数は1以上です。

バランスのとれた平均を持つ超指数分布のグラフ

このようなバランスのとれた超指数分布の例(c^2=2,4,8,16の時)をグラフに示します。比較のために指数分布もグラフに示します。なお、これらの分布の平均は全て1になるようにしてあります。