つなぎの式の導出(4)

つなぎの式の導出(3)」の続きです。


そこで今度は具体的な系列を想定して、それを複数重ね合わせて出来た系列の変動係数がどうなるか見ていきます。最初に考えるのは重ね合わせる前の系列が等間隔、つまり変動係数c_e=0の場合です。この場合には困ったことになります。
例えば10秒間隔の系列を2個重ね合わせた場合、もし、その2つの系列の点に5秒のズレがあるならば、重ね合わせて出来た系列は5秒を間隔とする等間隔系列になります。この時は変動係数c_e(2)=0となります。

  • 図5

あるいはズレが1秒しかないならば、間隔は1秒と9秒を繰り返すことになります。

  • 図6

この場合、重ね合わせて出来た系列の間隔を表わす確率変数をXで表すと

  • E(X)=5
  • E(X^2)=\frac{1^2+9^2}{2}=41

よって変動V(X)

  • V(X)=E(X^2)-E(X)^2=41-25=16

よって

  • c_e(2)^2=V(X)/E(X)^2=16/25=0.64

となります。つまり困ったことに、2つの系列の位置関係によって、合成された系列の変動係数は異なってしまいます。そこで少し考えを変えて、c_eが厳密にはゼロでなく、もとの系列における間隔は10秒をほんのわずかに確率的に変動すると考えます。そうすると2つの系列の間のズレは、(上の例では)0秒から10秒までの数直線上に一様に分布することが推定されます。
ズレが1秒であれば、合成された系列の間隔の値は1秒と9秒がそれぞれ50%の確率で出現します。
ズレが2秒であれば、2秒と8秒がそれぞれ50%の確率で、
ズレが3秒であれば、3秒と7秒がそれぞれ50%の確率で、
ズレが4秒であれば、4秒と6秒がそれぞれ50%の確率で、
ズレが5秒であれば、5秒と5秒がそれぞれ50%の確率で
出現します。このズレは本来は0秒から10秒まで連続的に変動しますから、間隔の発生確率分布は、上の例から推測して

  • 図7

のような一様分布になると考えられます。ここからE(X)E(X^2)を計算すると、

  • E(X)=\frac{1}{10}\Bigint_0^{10}tdt=\frac{1}{10}\left[\frac{t^2}{2}\left]_0^{10}=\frac{1}{10}\frac{100}{2}=5
  • E(X^2)=\frac{1}{10}\Bigint_0^{10}t^2dt=\frac{1}{10}\left[\frac{t^3}{3}\right]_0^{10}=\frac{1}{10}\frac{1000}{3}=\frac{100}{3}
  • V(X)=E(X^2)-E(X)^2=\frac{100}{3}-25=\frac{100-75}{3}=\frac{25}{3}

よって

  • c_e(2)^2=V(X)/E(X)^2=\frac{25}{3}\frac{1}{25}=\frac{1}{3}

ここで式(33)を登場させ

  • c_e(m)^2=1+m^x(c_e^2-1)・・・・・(33)

式(33)に

  • c_e^2=0
  • c_e(2)=\frac{1}{3}
  • m=2

を代入すると

  • \frac{1}{3}=1-2^x
  • 2^x=1-\frac{1}{3}=\frac{2}{3}
  • x\log(2)=\log(2)-\log(3)
  • x=1-\frac{\log(3)}{\log(2)}=-0.585

となりx=-0.5に近い値を得ます。もしx=-0.5という値を採用するならば式(33)は

  • c_e(m)^2{\approx}1+\frac{1}{sqrt{m}}(c_e^2-1)・・・・・(18)

に一致します。


さらに別の例で確かめてみましょう。c_e=0、すなわち一定間隔、の系列を3つ重ねた場合はどうなるでしょうか? これを計算するのは2つ重ねた場合よりもかなり難しくなります。この場合は0秒から10秒までの間に一様分布で変動する点を2点置き、この2点で区切られた3つの線分の長さの変動係数を求める、という作業になります。この計算は面倒なので工夫が必要になります。しばらくは、その前準備に費やします。