平安王朝

平安王朝 (岩波新書)

平安王朝 (岩波新書)

あまり読んでいない本の紹介が続きます。平安時代の個々の出来事については意外に知識がないことに気づいたのでこの本を買いました。文字通り、平安時代天皇を中心にした朝廷の動きを記述しています。しかし、この本は内容が盛りだくさんでテープを早回しにして見たような読後感がありました。
おもしろかったのは源氏や平氏が武士というよりは武装した貴族であったというあたりです。
この本の以下のような問題意識、すなわち日本における「王の物語」の不在、という問題意識には共感を覚えます。

「王の物語」の不在
この時代(CUSCUS注:平安時代)ヨーロッパでは、九世紀、フランク王国カール大帝シャルルマーニュ。全ゲルマンの統一者。サラセンとの戦いを描いた叙事詩ローランの歌の英雄)から、一二世紀、イギリスのリチャード獅子心王(十字軍で遠征。騎士道の誉れ高く、ロビンフッド伝説にも登場する王)の時代であり、中国では、八世紀、唐の玄宗皇帝(楊貴妃を寵愛し安禄山の乱をひきおこす。白楽天長恨歌は有名)から、チンギス・ハーン(「源平争乱」の起点となった「保元の乱」(一一五六年)頃に生まれ、ユーラシア大陸を席巻した)の時代にあたる。この時代の世界史は、もっとも王らしい「王の年代記」にいろどられているということができるかもしれない。

問題なのは、そもそも、日本の歴史文化のなかには、「王の物語」という形式自身が存在しないようにみえることである。

事実にもとづいて平安時代の「王の年代記」を復元することがどうしても必要だと思う。