2 古代国家の成立 日本の歴史
- 作者: 直木孝次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/06/01
- メディア: 文庫
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何を以て古代国家の成立とするか。もとより歴史とは不断に進むものであり、ある何かを以て区切りをつけることが出来るものではない、と考えることも出来ます。しかしこの本では、国家が個々人を戸籍として把握し得たことを以て、古代国家の成立としています。
庚寅*1戸籍はおそらく各戸の構成員が一人一人男女別に書き出されており、人別の租税徴収の要求に応じうるものであったろう。
・・・・家族までを支配したのが天智朝、家族のなかの個人をも支配するのが持統朝である。
いわゆる個別人身支配が成立したのである。わたくしはこれを、古代専制国家成立のもっとも重要なめじるし(指標)と考える。
こういう視点に基づいて、この本は持統天皇が譲位するところで終っています。このような古代国家がどのようにして成立したかが、この本の主要なテーマです。それは継体天皇による飛鳥での新体制に始まり、畿内豪族の連合体であった大和朝廷が、聖徳太子による諸政策や、蘇我氏の台頭、大化の改新、白村江(はくすきのえ)の戦い、壬申の乱、を経て、整備された官僚機構を持つ天皇中心の統治機構に発展していく過程です。また、ここで扱われている時代の後半は万葉集によって時代の当事者の人格を偲ばせる歌が今に伝えられており、その点でも興味深いものです。
私はやはり朝鮮半島に関わりのある白村江(はくすきのえ)の戦いに興味があります。日本は百済復興を目指して、唐、新羅連合軍と対戦して負けたのでした。この時代の各国の動きは、遠山美都男氏の下の本に詳しいです。
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- 作者: 遠山美都男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/10/15
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白村江に関わりのある万葉集の歌として、斉明天皇(女帝です)の次の歌を思い出しました。
- 熱田津(にぎたづ)に船乗りせむと月待ては 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな
これは百済復興軍を自ら率いる斉明女帝が、那の津(福岡)に向かう途中、熱田津(にぎたづ 愛媛県松山市)で詠んだ、出航の歌です。斉明女帝68歳でした。こんな高齢のしかも女帝が都を離れて軍を率いるというのは非常事態です。なぜこんなにまでして百済を復興したかったのか、興味をそそります。
*1:紀元690年