ミンスキーとパパートの「パーセプトロン」という本:英語版Wikipediaから

以下は、「Perceptrons (book)---Wikipedia」の和訳です。NoteとReferenceは省略しました。

  • パーセプトロン計算幾何学への序論」は1969年にマービン・ミンスキーシーモア・パパートによって書かれ発行された本である。1970年代初めに手書きの修正と追加を加えた版が発行された。さらに拡張版が1987年に発行され、そこには1980年代になされたこの本への批判に反論するための章が含まれている。
    • この本の主題はパーセプトロンであり、それは1950年代終りから1960年代初めにかけて開発された重要な種類の人工ニューラルネットワークである。パーセプトロンに関する主要な研究者はフランク・ローゼンブラットであり、彼は「神経力学の原理」という本の著者であった。ローゼンブラットとミンスキーは学生の頃から互いに知り合いで、ブロンクス科学高校で学年が1年しか違わなかった。彼らは一時期AIコミュニティーの内部で議論の中心的人物になり、会議で声高な議論を促進したことで知られている。論争にもかかわらず、ローゼンブラットの死後に発行されたこの本の修正版には彼への献辞が含まれている。
    • この本は人工知能の研究における長年の論争の中心である。著者らによってなされた悲観的な予測がAIにおける研究を誤った方向の変更させ、いわゆる「記号的」システムへ努力を集中し、いわゆるAIの冬に貢献した責任があると主張されている。1980年代に新しい発見が、この本の予兆が間違っていることを示した際に、この決定がおそらく不運によるものであると判明した。
    • この本はパーセプトロンに関する多くの数学的証明を含み、パーセプトロンのいくつかの強みを強調している一方で、以前は知られていなかったいくつかの限界をも示している。その最も重要なものはいくつかの述語、つまりXOR関数と重要な接続述語、の計算に関係している。この問題は、この述語を計算することが人間自身にとって困難であることを示すことを意図して、この本の不自然に色づけされたカバーに図示された。
  • XOR問題
    • この本の若干の批判者たちは、著者たちが、単一人工ニューロンはXOR論理関数のような若干の関数を実装出来ないので、より大きなネットワークもまた類似の制約をもち、よって捨て去るべきであるとほのめかしている、と述べている。3層パーセプトロンに関するのちの研究がそのような関数の実装方法を示したので、この技術は抹消されずにすんだ。
    • この話には多くの間違いがある。単一ニューロンがごく少数の論理述語だけを実際に計算出来るのであるが、そのような要素からなるネットワークは考えられるあらゆるブーリアン関数を計算出来ることは広く知られていた。これはウォーレン・マカロックとウォルター・ピッツによって知られ、彼らは自分たちの形式ニューロンからチューリングマシンを構成する方法すら提案しており、彼らはローゼンブラットの本の中で言及され、パーセプトロンの本でも言及されている。ミンスキーはまた自分の本「計算:有限マシンと無限マシン」の中で単純な理論的コンピュータを構成するために形式ニューロンを広範囲に使用している。
    • この本が証明しているのは、(いわゆる「隠れた層」とか「中間層」を持つ)3層フィードフォワードパーセプトロンにおいて、最初のニューロン層(「中間層」)の少なくとも1つがゼロでない重みをもってどの入力とも接続しない限り、若干の述語を計算することは不可能である、ということである。これは、個々のニューロンが少数の入力とのみ接続している「ローカル」ニューロンの少数の層を持つネットワークに大部分頼ろうとする一部の研究者が抱いている希望とは反対のことであった。「ローカル」ニューロンを持つフィードフォワードマシンは、より大きくて完全に接続されたネットワークより作成と使用がずっと容易なので、この時代の研究者はより複雑なモデルの代わりにこれらに集中していた。
    • 他の批判者たち、なかでもジョルダン・ポラックは、ローカル検出器で検出出来ない大域的な問題(パリティ)に関わる小さな証明をコミュニティが全てのアイディアを埋葬する試みに成功したと解釈したことに注意している。(「Pollack, J. B. (1989). パーセプトロン拡張版のレビュー、数理心理学ジャーナル、 33, 3, 358-365」参照)
  • 論争の分析
    • それは広く利用可能な本であるが、多くの科学者はパーセプトロンについて他の科学者が行ったことをそのまま繰り返しており、それがパーセプトロンについての誤解を広めるのを助長している。ミンスキーはこの本をラブクラフトの話の中の架空の本ネクロノミコンと比較さえした。つまり多くの人に知られているがほとんど読まれたことがない、というのである。1980年代にPDPの本に象徴される研究の新しい波とともに始まったこの本の批判について著者たちは拡張版で語っている。
    • 科学者のあるグループによってパーセプトロンが調査されAIの研究をある方向に進め、次に新しいグループによってのちに別の方向に進められた様子は、科学の発展の、論文審査の社会的研究の主題であり続けた。