神経回路網の自己組織と神経場のパターン力学 甘利俊一著(7)
では
- ・・・・(7)
についていろいろ考えてみたいと思います。私は時間による微分をドットで表す方法は好きではないので*1、以下のように書き表します。
- ・・・・(a8)
この式でベクトルの1つの成分だけ取り出して考えます。
- ・・・・(a9)
さらには確率1/2で値1を取り、確率1/2で値0を取るものとします。またとします。は本来はとの関数ですが、ここでは簡略化のためとします。すると、もし時定数がが1または0を持続する時間に比べて極めて短い場合は、はの値と同じ1または0にすぐに収束します。するとの変化の様子は例えば下記グラフ1の青い線のようです。ここではの初期値は0であると仮定しました。
一方、の平均[tex:\left
に対応する
は
- ・・・・(a11)
となります。これの解をの条件で解くと
- ・・・・(a12)
となります。これをグラフに示したのが上のグラフ1の赤い線です。赤い線と青い線は一見、まったく違います。この様子を見ると、論文に書かれていたような
この方程式の解は、ほとんどすべての場合に、実際の学習方程式(7)の解の良い近似を与えることが数学的に証明できる。
という記述は理解しがたいものになってしまいます。
しかしよく考えると、青い線はがどう変化するかによって変わります。は確率変数なので、グラフ1に青線で示したグラフは多数ある可能性のうちの一例でしかないことが分かります。つまり自身が確率変数ということになります。では各時刻におけるの平均(時間平均ではない。集合平均の意味で。)[tex:\left
- 「この方程式の解は、ほとんどすべての場合に、実際の学習方程式(7)の解の良い近似を与える」
という記述を、この方程式(ここでは(a9))の、初期値を定めた場合の結果の解の(集合)平均[tex:\left