ホップフィールドネットワーク理解に向けての準備体操(7)

ホップフィールドネットワークのエネルギーEが減少傾向にあるということは分かりましたが、シナプス係数s_{ij}がどのように安定状態を決定しているのか分かりません。今の私にはこの問題は難しすぎるのですが、逆にある状態\{X_i\}が与えられた時にその状態を安定状態にするようなシナプス係数s_{ij}をどのように決めればよいかについてはネットに出ていました。ここでX_iは安定状態にしたい状態のi番目のニューロンの出力を表すことにします。一方、一般の状態のi番目のニューロンの出力はx_iで表すことにします。さて、シナプス係数s_{ij}

  • s_{ij}=\left\{\begin{array}X_iX_j&\;&(i\neq{j})\\0&\;&(i=j)\end{array}・・・・(13)

と決めればよいです。この理由は次のようなものです。式(7)

  • E=-\frac{1}{2}\Bigsum_{i=1}^n\Bigsum_{j=1}^ns_{ij}x_ix_j・・・・(7)

に式(13)を代入すると

  • E=-\frac{1}{2}\Bigsum_{i=1}^n\Bigsum_{j=1,i\neq{j}}^nX_iX_jx_ix_j・・・・(14)

ここで二重の\Bigsumの中の項X_iX_jx_ix_jは、X_i, X_j, x_i, x_j がいずれも−1か1の値しかとらないので、X_iX_jx_ix_jも−1か1の値です。よってEを最低の値にするためには全てのX_iX_jx_ix_jを1にすることです。これが実現出来るのは全てのiについて

  • X_i=x_i

とするか

  • X_i=-x_i

とするかの、この2つの仕方しかありません。ここから\{X_i\}\{-X_i\}が安定状態になることが分かります。

  • 本当にX_i=x_iとするかX_i=-x_iとするかしかないことを確かめておきましょう。特定のiについて考えます。X_iX_jx_ix_jの中のX_ix_iは−1か1のどちらかの値しか取ることが出来ません。
    • そこでX_ix_i=1と仮定してみます。するとX_jx_j=1でないとX_iX_jx_ix_j=1になりません。しかも全てのj\neq{i}についてX_iX_jx_ix_j=1にしようとすれば、全てのj\neq{i}についてX_j=x_jでなければなりません。一方、X_ix_i=1でしたのでX_i=x_iとなり、結局全てのiについてX_i=x_iになります。
    • 反対に、X_ix_i=-1と仮定した場合、X_jx_j=-1でないとX_iX_jx_ix_j=1になりません。しかも全てのj\neq{i}についてX_iX_jx_ix_j=1にしようとすれば、全てのj\neq{i}についてX_j=-x_jでなければなりません。一方、X_ix_i=1でしたのでX_i=-x_iとなり、結局全てのiについてX_i=-x_iになります。

これに関連して「ホップフィールドネットワーク理解に向けての準備体操(3)」で述べた

ある安定状態の個々のニューロンの出力で「1」と「−1」を入れ替えたものも安定状態になることが推測されます。この推測を確かめるのはのちに行います。

という宿題をここで果たしておきたいと思います。式(7)で全てのiについてx_i-x_iで置きかえてもEの値が変わらないことは容易に分かると思います。よってx_i=X_iが安定状態であればEは最小値ですから、x_i=-X_iでもEは最小値になります。このことから、ある安定状態の個々のニューロンの出力で「1」と「−1」を入れ替えたものも安定状態になる、ことが言えます。


もう1つ宿題が残っていました。「ホップフィールドネットワーク理解に向けての準備体操(2)」で

ホップフィールドネットワークでは

  • s_{ij}=s_{ji}・・・・(6)

でなければならない、としています。なぜこの条件が必要なのかはのちに説明します。

と書いていました。式(6)の必要性をここで述べます。「[:title=ホップフィールドネットワーク理解に向けての準備体操(5)]」でEが絶対増加しないことを証明する際に式(6)を使っています。もし式(6)が成り立たないと式(8)以降が成り立たず、Eが絶対増加しないということが言えなくなります。すると安定状態の存在も言えなくなります。安定状態の存在を確保するためには式(6)の条件が必要になります。