法則(搬送バッチの構成)

  • 法則(搬送バッチ構成):
    • ラウティング(=プロセスフロー)の一区間を通過するサイクルタイムは、搬送装置の待ち時間がないと仮定した場合、この区間を通して使用されるバッチ・サイズと大体比例して増加する。
  • この法則は、あまり厳密なものではありません(「大体比例して」)。搬送キャパシティが充分にあるものと仮定しての話です。搬送バッチを構成するのにかかる時間は搬送バッチ・サイズと比例するのでその他の時間、つまり処理時間や搬送時間と処理待ち時間、が変わらないのであれば、サイクルタイムは大体、バッチ・サイズに比例して増加するだろう、ということを言っています。
    • 処理時間は搬送バッチに関係ないので変わらないでしょう。
    • 搬送時間は、バッチ・サイズが大きいほど搬送量が少なくなるので、バッチ・サイズの増加とともに減少する傾向にあります。しかし、上記の法則は「搬送装置の待ち時間がないと仮定して」と断っています。これは搬送能力(キャパシティ)が充分にあるものと仮定していることになりますので、搬送時間はバッチ・サイズの大小によってあまり変わりません。
    • 最後に処理待ち時間ですが、これが大きなバッチ・サイズで装置に到着した場合と小さなバッチ・サイズで装置に到着した場合で異なるかどうかが問題です。Factory Physicsの本では待ち行列の近似式(Kingmanの近似式)を用いた説明で処理待ち時間は変わらない、と説明しています。私はその確信がありません。ある場合には、搬送バッチ・サイズを大きくすると待ち時間も長くなるのでないか、とも思っています。この点はまだ、調査中です。このことにつきましては、別途、述べる機会を作りたいと思います。
  • この法則はラインのサイクルタイムを短縮する最も容易な方法の1つとして、搬送バッチを縮小することを提案しています。より複雑なサイクルタイム短縮戦略を検討する前に搬送バッチの縮小を検討する価値があるとこの本は主張しています。もっとも、搬送バッチが小さくなれば材料搬送回数はより多くなるので、あまり搬送バッチを小さくし過ぎないように注意する必要があります。さもないと、搬送待ち時間が大きくなり、搬送バッチ縮小によるサイクルタイム短縮分を帳消しにしてしまうでしょう。よって、搬送バッチ構成の法則は、搬送を実行するのに充分な材料搬送キャパシティがある場合の、搬送バッチの縮小を通してのサイクルタイム短縮の可能性を述べています。
  • この話は、半導体ファブでのロットサイズの縮小という話につながっていきます。ロットサイズの縮小につきましてはロットサイズを参照下さい。

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