中世シチリア王国
- 作者: 高山博
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/09/20
- メディア: 新書
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話は上とそれますが、以下、引用したいので引用します。
さまざまな顔を持つパレルモは、何度訪れても飽きることのない不思議な魅力をたたえている。映画界の巨匠ヴィスコンティも、その魅力にとりつかれた一人にちがいない。彼の作品「山猫」は、シチリアの貴族社会を描いたランペドーサの同名の小説をもとにして作られたものだが、その有名な舞踏会のシーンは、パレルモ近郊の館で撮影された。サリーナ公爵を演じたバート・ランカスターが、白い衣装に包まれて輝くばかりに美しい、新興ブルジョワジーの娘アンジェリカ役のクラウディア・カルディナーレとワルツを踊るシーンは、パレルモが持つもう一つ別の顔を象徴している。
その舞踏会の場面にはバジーレ教授(注:この本の著者の友人)の一族や知人たちが数多く出演していたという。当時少年だった彼は、眼鏡をかけていたためにはずされたそうだ。ヴィスコンティが描いたシチリア貴族の社会は、今もパレルモの上流社会のサークルとして生きている。生まれてから今までバスに乗ったことがないというバジーレ教授によれば、この大きいとは言えないパレルモの町の中でも、彼やその友人たちは、自分が属しているグループ外の人々と言葉を交わすことはほとんどないという。同じ空間を共有していながら、接触することなく別の世界に生きているのだ。
ランペドーサ描く「山猫」は、イタリア統一戦争前後のシチリアですが、サリーナ公爵はブルボン家の両シチリア王国につかえる立場にあり、両シチリア王国はさかのぼれば、この本が紹介する中世シチリア王国(ノルマン朝)に起源があるのを思い出しました。