物語 韓国史

物語韓国史 (中公新書)

物語韓国史 (中公新書)

本書の著者金両基氏は在日の方だそうで、韓国の神話を日本に伝えるには適任だと思います。本書のねらいを著者は「あとがき」でこのように書かれています。

 学生やこどもたちに「歴史」の話をしようとすると、難しい話はごめんだ、というような表情にかわる。学生時代のわたしにも、そのような体験がある。
 歴史書の多くは、歴史的事実を学問的に整理しようとするためか、えてして表現が無味乾燥で、遊びがほとんどない。歴史を、歴史教育の枠のなかに閉じこめると、そのようなことになる。本書は、歴史の専門家でないわたしが、その枠を打ち破り、歴史を生活の周辺に呼び戻しながら味わってみたい、という想いにかられて書いた。
 (中略)父が子に語る韓国の歴史、そのような肩のこらない本になったと思う。物語を読むように、韓国の五千年の歴史を散遊してみた。

この本はあとがきの別のところに

 神話と歴史との関係にかなりスペースをさいた

とあるように、高句麗新羅百済、駕洛の神話と高句麗新羅百済の歴史にかなりスペースを割いています。そこが私の気に入った点です。
しかし2点ほど不満な点があります。ひとつは、井上秀雄氏(東北大学名誉教授)が檀君神話を「檀君信仰は初め民間信仰であったが」と書いたことで、「皇国史観の払拭を志す学者でもある氏が、こと檀君のことに関しては旧態依然の説を踏襲している」と批判していることです。私には著者が何にそんなにムキになっているか理解出来ません。もうひとつは、韓国語の発音をあらわすためのルビのおくりかたが、時々おかしく感じられることです。例えば武寧王の武寧に「ムリョオン」とおくりがなをつけていますが「ムリョン」のほうが原語に近いのでは、と思ったりします。
あえて2点、不満を述べましたが、この本は私の韓国神話への興味を満たしてくれる本の1つです。