第3章 MRP十字軍 の概要

1960年代の始めまでに、多くの企業は定型的な会計機能を遂行するためにデジタル・コンピュータを使いつつあった。スケジューリングと仕掛管理の複雑さと単調さを考慮すると、コンピュータをこれらの機能に同様に拡張しようとすることは自然であった。この領域での最初の実験者の一人はIBMであり、Joseph Orlickyとその他の人々は、のちに材料所要計画(material requirement planning:MRP)と呼ばれるものを開発した。それはゆっくり始まったが、アメリカ生産在庫管理協会(APICS)がMRPの使用を促進するために「MRP十字軍」を始めた時から、MRPはアメリカにおける主要な製造制御パラダイムになった。MRPは広く普及しているので、製造マネージャはそれがどのように動作するのかについてある程度予備知識を持つべきである。


第2章で述べたように、MRP以前には、大部分の生産制御システムの製造は統計的再発注点モデルに基づいていた。これに対しMRPではシステムの外から起こる需要を独立需要と呼び、独立需要製品を構成するコンポーネントの需要を従属需要と呼び、この両者を区別する。MRPの主要アイディアは、

  • 従属需要を満足させるための製造は、独立需要を満足させるようにスケジュールされるべきである.

ということである。MRPはマスタ製造スケジュールBOM固定リードタイムに基づいて、必要に基づいて材料をオーダーするための単純な方法を提供する。


製造リソース計画、すなわちMRP IIは、MRPの問題をさらに広いビジネス機能の枠組みで扱うために開発された。MRP IIは、生産制御問題を時間尺度と製品群に基づいた階層に分解する、非常に一般的な制御構造を提供してきた。より最近に、ERPがこの階層的方法を、膨大な量のデータを統合し追跡することができる強力な管理ツールに統合した。


MRPやMRP IIやERPの生産管理への重要な貢献にもかかわらず、これらのシステムに内在する基本仮定、すなわち「無限キャパシティ」と「固定リードタイム」の仮定、には根本的な問題がある。第5章でさらに議論するように、MRPの単純さと広い適用可能性を維持しながら、その基本的困難をどのように解決するかが主要な課題となる。第4章でJIT運動によって提供された洞察を記述し、パートⅡで工場の振る舞いに関するいくつかの基本的関係を開発した後、我々はこの課題をパートⅢで扱う。


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