1.1. 導入:Quantitative System Performance

第1章 待ち行列ネットワーク・モデル化の概要:Quantitative System Performance」の続きです。

1.1. 導入
今日のコンピュータ・システムは数年前のコンピュータに比べてさえも、より複雑でより迅速に発展し、ビジネスの実行により必須になっている。その結果、これらのシステムの振舞を理解するのを支援するツールとテクニックの必要性が高まっている。そのような理解はシステムの生涯を通じて発生するコストと性能の問い対して賢い答を提供するために必要である。

  • 設計と実装の時に
    • ある航空宇宙企業は数百の航空機設計者がグラフィック・ワークステーションを通して分散データベースへ同時にアクセスすることを可能にするコンピュータ支援設計(CAD)システムを設計し構築している。設計段階の初期に、データベース・アクセス。メカニズムやプロセス同期化や通信メカニズムといった課題について基本的な決定を行わなければならない。さまざまなメカニズムの相対的な利点は実装以前に評価されなければならない。
    • あるコンピュータ・メーカはパケット・オリエンティド・ブロードキャスト通信ネットワークを用いて端末をメインフレームに接続するためのさまざまなアーキテクチャプロトコルを考えている。端末はクラスターにすべきだろうか? パケットは複数文字を含むべきか? 同一メインフレーム用に設計された複数端末からの文字は単一パケットに多重化されるべきだろうか?
  • 規模決定と導入の時に
    • ターンキー薬品情報システムのメーカは入札の際にシステムの規模決定をする効率的な方法を必要としている。さまざまなタイプのトランザクションの到着レートの見積が与えられるとこのベンダは、さまざまなハードウェア構成で稼動する場合にシステムが提供する応答時間を予測しなければならない。
    • ある大学が、学部教育用会話型コンピューティングを提供するための提案の回答として20件の入札を受け取った。選択基準は若干の必須要求を満足するそれらのシステムの間での「ポートあたりコスト」であるので、これらの20システムのキャパシティを比較することは調達のために必須である。結論を出すのに1ヶ月しか使えない。
  • 構成と負荷の改善時に
    • ある株式交換は新しいクラスのオプションを取引し始めるつもりである。これが発生した時、オプションのトランザクションの交換の総量は7倍に増加すると予想される。変更が実装されると、コンピュータと要員の両方の適切なリソースが準備されていなければならない。
    • 作業負荷の成長予測が与えられたとして、エネルギー・ユーティリティがその現在の構成の寿命を評価しなければならない。システム・ボトルネックは何かと、それを軽減するためのさまざまな選択肢の相対的コスト効率を知ることが望ましい。特に、これは仮想メモリ・システムであるので、メモリサイズとCPUパワーとページング・デバイス速度の間のトレードオフを評価しなければならない。

これらの質問は関係する組織にとって非常に重要であり、間違った答から潜在的に重大な影響を持つ。あいにく、これらの質問は複雑でもあり、正しい答は容易に得られない。
 これらのような質問を考慮する際に、人はシステムの徹底的な把握と、応用と、スタディの目的から始めなければならない。基礎としてのこれによって、いくつかの方法が可能になる。
 ひとつは洞察と傾向の外挿の使用である。確かに、信頼できる直感を生みだすある程度の経験と洞察に代わる物はほとんどない。あいにく、十分多くこれらの特質を有する人はまれである。
 もうひとつは選択肢の実験評価である。実験は常に価値があり、しばしば要求され、時々選択の方法である。それはまた高価でもあり、しばしば法外にそうである。他の欠点は、実験は一組の仮定のもとでのシステムの振舞についての正確な知識を生み出すが、一般化を許すようないかなる洞察も生み出さない傾向がある、ということである。
 これら2つの方法はある意味、スペクトラムの両極端である。直感は迅速で柔軟であるが、その精度は、獲得と妥当性確認が困難な経験と洞察に基づいているので疑わしい。実験はすばらしい精度をもたらすが、多くの時間と労力を要し柔軟性に欠ける。これらの極端の間に第3の方法が存在し、それがこの本の一般的主題であるところのモデル化である。
 モデルはシステムを抽象したものである。つまり、それがシステム自身であるところの詳細の山から、システムの振舞にとって本質的なそれらの側面を蒸留する試みである。この抽象過程によっていったんモデルが定義されると、スタディの範囲にある任意の選択肢を反映するためにそれをパラメータ値を決定することが出来、そして、この選択肢におけるシステムの振舞を決定するために評価することが出来る。システムの振舞を調査するためにモデルを使用することは実験に比べてあまり面倒ではなくより柔軟である。というのはモデルは不必要な詳細を避けた抽象物であるからである。それは直感より信頼性がある。というのはそれはより整然としているからである。モデル化の個別の方法はモデルの定義とパラメータ値決定と評価のための枠組みを提供する。同じく重要なこととして、モデルの使用は直感と実験の両方を向上させる。モデルは直観の結果を追求することを、つまり広範囲の選択肢のもとでのシステムの振舞を調査することを、可能にするので直感は向上する。(事実、この本における我々の目的は定量モデルを考案することであり、それはシステムの性能尺度を正確に反映しているのであるが、直感への同様に効果的なガイドが、それほど詳細でない定性的モデルによって提供出来る。それはシステムの一般的な振舞を性格に反映しているが、必ずしもその性能尺度の特定の値をではない。) モデル化の個別の方法によって提供された枠組みは、モデルを定義しパラメータ値を決定するために必要な実験についての指針を提供するので、実験が向上する。
 そしてモデル化は、コンピュータ・システムに関する情報を収集し、組織化し、評価し、理解するための枠組みを提供する。


1.2. 待ち行列ネットワーク・モデルとは何か?」に続きます。