(妄想)9月の星座
星空はこちらをご覧下さい→AstroArts
- 夏の大三角形の中にある小さな星座はやの星座。恋の矢よ、よくハートにささっている絵にあるような、あの矢。
- そんな昔からあったんですか?
- (少し笑って)恋が?
- いえ、ハートに矢が刺さるという概念が、ですよ。(と言いながら、彼女には恋人がいるのだろうか、などと思っていた。私は当時17で、彼女はたぶん20ぐらいだっただろう。でも、その質問をすると今のように会ってくれなくなりそうに感じたので、黙っていた。)
- 恋の神はローマの呼び方ではクピード、英語で言うキューピットね。子供のように見えるけど、大神ゼウスよりも古い神です。「ダフニスとクロエー」の中にもそれを踏まえた場面が登場するわね。
・・・・ぼくは子供のように見えるけれども、子供じゃない。ぼくはクロノスさま、いや永劫の時よりも年寄りなのだよ。あんたが青年の頃あの山で、原一面に拡がって草を食む牛を飼っていたのもぼくは知っているし、あんたがアマリュリスに恋をして、あそこの樫の木陰で笛を吹いていたのも知っている。ぼくは娘のすぐそばに立っていたのだが、あんたには見えなかったのさ。・・・・
- 作者: ロンゴス,松平千秋
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1987/03/16
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (19件) を見る
- クロノスはゼウスの父親だから、クピードはゼウスよりも古い神ということになるの。そしてこの神はゼウスよりも強い力をお持ちです。だからゼウスも、たびたび恋の矢に射られたのです。あのはくちょう座もわし座もゼウスの変身した姿を記念にした星座だけれども、どちらも彼が恋の思いに駆られた時の姿です。はくちょう座の白鳥の姿は、ゼウスがテュンダレオスの妻だったレーダーに横恋慕した時の姿。彼は美しい白鳥に変身してレーダーに近づいたのです。そうして生れたのが、カストールとポリュデウケースの男の双生児と、ヘレネーとクリュタイメーストラーの女の双生児です。この中であなたがたぶん知っているのはヘレネーよね。
- ええ、もちろんです。トロイア戦争の原因になった美女でしょ?
- そう。
- でも、クリュタイメーストラーも知っていますよ。アイスキュロスの悲劇、オレステイア三部作をこの前読みましたから。
- じゃ、カストールとポリュデウケースは?
- ディオスクーロイ(ゼウスの息子たち)ですね。ふたご座になった・・・。
- ふたご座の話は本当は今したいけれど、まだ空に出ていないから冬になったらお話します。今度はわし座の話ね。これはゼウスが美少年をねらった話よ。トロイア王家の王子ガニュメーデースは、当時、世界で一番美しい少年だったのでゼウスが鷲に変身してさらったの。
- ゼウスはガニュメーデースをさらってどうしたのでしょうね。
- そんなこと私の口から言わせないでよ。パイディカというギリシア語を知らないの? とにかく彼は天に上げられて、オリュンポスでの宴会の時にゼウスに酒を注ぐ人にさせられました。この姿が星座になったのがみずがめ座よ。
- ああ、恐い。少年愛って・・・・僕の理解の範囲外です・・・・。
- 最後にみなみのかんむり座。これは今の季節しか見えません。この星座にまつわる神話は残念なことに・・・・。