(創作)家出中年


酒を飲んでいるうちに頭が変になっていまったようだ。「モビリティが足りない」「ノマドだ」などとつぶやきながら家を出てしまった。ノマド*1なので新幹線の指定席を取るなどということはしない。自由席で自由に席を占拠するが、あいにくB席(3列並んだ真ん中の席)しか空いているのが見つからない。空いている席の両側はどちらも妙齢の楚々とした女性だったが私はかまわない。それでも遠慮して小声で車内販売のお兄さんに「ビールありますか?」と尋ねる。兄さん、私の声が聞き取れなかったのか、般若のようなしかめっ面を見せる。若いな、オヌシ。そんなんじゃ大成せんぞ。別にケンカするつもりはなかったのでもう少し大きな声で「ビール」という。兄さん、途端に菩薩顔に変わってビールを差し出す。
缶ののみ口を開ける時に、眠っていたはずの右隣の妙齢さんが、サッと手に持っていたバッグを手でかばうように蔽った。飛沫が飛ぶのを恐れたのだろう。別に私は気にしない。ちょっと肩身を狭くしながらグビグビやった。・・・・・何が不満というわけではない。いや、不満は山ほどあり、解決困難な課題は2つはある・・・・。
この家出中年は、横浜は「象の鼻」で、観光客の写真に写ってしまったらしい。

この船でどこかに行くつもりか、家出中年!

「タネ」か。もうタネないし・・・。

乗せてってくれないかなあ・・・・。