プルースト「失われた時を求めて――コンブレー」を読書中(10)

今日は304ページまで。
ヴァントゥイユ嬢の悪徳についての考察が記述されていますが、私には難解です。次に「スワン家のほう」とは反対の「ゲルマント家のほう」への家族での散歩の記述が続きます。私が以前「補足1:細かい描写」で引用した叙述が登場します。それからまだ見ぬ高貴な女人、ゲルマント夫人への主人公のあこがれ。しかし、そのあこがれは、たまたま当のゲルマント夫人の姿を教会で見た時に失望に変わります。それはまだ少年でしかない主人公には、この地方の領主の家系であり、伝説の主人公の末裔であるゲルマント家の人々は、神話上の人物のように想像していたからでした。しかし、奇妙なことに、その失望は、また短時間のうちにふたたび崇拝へと変わっていくのです。それは現実から受けた印象を主人公が丁寧に修正して、自分の元々の空想と整合させる過程です。
次に、マンタンヴィルの鐘塔を見た時の感動を主人公が短文に定着させた、主人公の最初の文学的活動が登場します。