8.5.1.大域バランス(4):Quantitative System Performance
「8.5.1.大域バランス(3)」の続きです。
最後にフロー・バランス方程式を、ある状態に入るフローの総レートがその状態から出るフローの総レートに等しいと設定することによって得られる方程式である、と定義する。フロー・バランス方程式は未知数が可能な個々のネットワーク状態で費やす時間の割合であるような連立線型方程式である。待ち行列ネットワーク・モデルのための大域バランス解法はこれらのフロー・バランス方程式を作成し解くことを含む。1つの状態について1つの方程式が存在することに注意しよう。よって状態空間の規模はネットワークの規模とともに組合せ論的に増加するので、大域バランスの複雑さも同様に増加する。
大域バランス手法の特定の例として図8.6の高レベル・モデルの解を考察する。
- 状態空間を作成する:CPUは優先スケジューリングを使用するので状態記述の一部としてそこのキューでの客の順序を含む必要はない。同様に、FESCは合成キューイングを用いるので、2つの客クラスはそこでは大部分は独立に振舞い、よってキューの順序は重要ではない。よってモデルは6つの状態を持つ。CPUが状態xにありFESCが状態yにあるネットワークの状態を示すのに記法(x;y)を用いると、モデルの状態空間は、以下のようになる。
- 状態1:、状態2:、状態3:
- 状態4:、状態5:、状態6:
- 状態遷移レートを計算する:全ての遷移は、客のCPUからFESCへの、あるいは、FESCからCPUへの動きによって引き起こされる。遷移レートは、元々の状態にある時に客が元のセンターで処理を受ける処理のレートに、この客が元のセンターでの終了時に直接他の(行先)センターに移動する回数の割合をかけたものに等しい。
- 我々が考察している高レベル・モデルの単純な性質のために、客は常にFESCの完了時にCPUへ、CPUでの完了時にFESCへ移動する。よって、
- その結果、例えば、状態から状態への遷移レートは、この遷移が、個々のクラスの1つの客がFESCに存在する時に、クラス客のFESCからCPUへの移動を伴うので、である。図8.7はこのモデルの状態遷移図を示している。
- 図8.7 状態遷移図
- フロー・バランス方程式を作成する:フロー・バランス方程式はフロー・インとフロー・アウトと等しく設定することによって得られる。得られる連立方程式は一意の解を指定しない。よって、任意の方程式が廃棄され、状態内で費やす時間の割合の合計が1になることを保証する方程式と置き換えられる。行列の記法で、この例のバランス方程式は以下のようになる。
- フロー・バランス方程式を解く:連立線形方程式を解くための標準のアルゴリズムがある。小さなシステムにはガウス消去法を用いることが出来る。より洗練された、繰り返し手法がより大きなモデルには要求される。上記の連立方程式は個々の状態で費やす時間の割合を与える。
- 、
- 、
- 、
- 性能尺度を計算する:さまざまな状態で費やす時間の割合から性能尺度を計算することが出来る。例えば、クラスのCPU稼動率は以下で与えられる。
「8.5.2.ハイブリッド・モデル化(1)」に続きます。