階層的モデル化の解法について(1)
もう一度「8.4.高レベル・モデルの求解」です。
高レベル・モデルを評価する最も明らかな方法は前章で開発した解析テクニックを適用することである。第20章で我々は負荷依存サービスセンターを含むネットワークの効率的な評価を可能にするMVA解法の拡張を示す。あいにく、この方法は分離可能待ち行列ネットワーク・モデルにのみ適用可能である。
「第20章 負荷依存サービスセンター」はすでに見てきました。しかしこの方法は「分離可能」待ち行列ネットワークでしか使えないということです。すると解法とそれが適用出来るネットワークの種類の関係は
ということなります。
ところが、これは不正確です。なぜかと言いますと、まず「8.2.フロー等価サービスセンターの作成」の記述
例えば、ディレイ・センターは(単一クラス・モデルにおいては)キュー内に1個の客の場合、処理レートを、キュー内に個の客の場合、処理レートを持つ負荷依存サービスセンターとして考えることが出来る。
からディレイ・センターは負荷依存サービスセンターであることが分かります。
ところが、「6.4.2.1.厳密な解法」や「7.4.2.1.厳密な解法」を見てみると厳密MVA法はキューイング・センターのみではなくディレイ・センターも扱っています。「アルゴリズム6.2 厳密MVA解法」や「アルゴリズム7.2 厳密MVA解法」を見ればそれは明らかです。そうすると上のまとめは、以下のように修正したほうがよさそうです。
次に進みます。
非分離可能高レベル・モデルは、元もとのモデルの(プライオリティ・スケジュールを用いたサービスセンターのような)非分離可能な側面が高レベル・モデルに直接表現される場合や、負荷依存サービスセンターが任意の処理レート関数を持つ場合に発生する。
話は先ほどとは変わって、「非分離可能」ネットワークについての話になっています。
差し当たり、解析すべき元もとのネットワークが分離可能であり、よってこれら2つの問題のうちの最初のものは発生しないと仮定しよう。
これはどういうことでしょうか? 「2つの問題のうちの最初のもの」と言っているのは「元もとのモデルの非分離可能な側面が高レベル・モデルに直接表現される場合」のことを言っているのでしょう。
- 元々のモデルが非分離可能→そこから作った高レベル・モデルも非分離可能
ということでしょう。この内容は理解出来ます。では「差し当たり、解析すべき元もとのネットワークが分離可能」なのに、そこから作った高レベル・モデルが非分離可能、という場合はどのような場合なのでしょうか? 上に引用した文には「負荷依存サービスセンターが任意の処理レート関数を持つ場合」と書かれているのですが、これの意味するところが分かりません。
この疑問をとりあえず放置したまま進みますと
この場合、もし我々が効率的な解析テクニックを用いて高レベル・モデルを評価したいならば、個々のFESCの負荷依存処理レートに若干の制限を要求することになる。・・・・
とあって、そのあとに数式が出てくるのですが、その式の根拠も示されていません。ここの箇所は理解出来ないところです。
「階層的モデル化の解法について(2)」に続きます。