9.5.ページング(2):Quantitative System Performance

9.5.ページング(1)」の続きです。(目次はこちら

1回のページ・フォールトを処理するのに平均12.5msecのページング・ディスクの処理が必要であることを我々が知っているとしよう。すると、平均で個々のジョブはページング・ディスク上で333{\times}0.0125=4.16秒の処理要求時間を課すことになる。その結果、待ち行列ネットワーク・モデルは、5個の客個体数と、3秒、8秒、2秒、4.16秒の処理要求時間を持つ4つのサービスセンターを持つ。
 図9.6、9.7、9.8はそれぞれジョブ/分の単位でシステム・スループットを、秒の単位で平均ジョブ応答時間を、そしてデバイス稼動率を、それぞれマルチプログラミング・レベルの関数として示している。

  • 図9.7 マルチプログラミング・レベルと応答時間
  • 図9.8 マルチプログラミング・レベルとデバイス稼動率


 この例はページング・システムを解析するのに使用する手法を示している。そのようなスタディで発生する困難はモデルのパラメータの値を決めるのに使うデータが使用可能であるかどうかに関係している。この例はこの点について非常に単純化している。例えば、

  • あるプログラムについてのページング生存期間データを入手することは極めて困難である。それを行うことは、オペレーティング・システムが使用するページ置換方針の環境下でのそのプログラムの実行の詳細な追跡を要求する。
  • プログラムのページング特性はプログラムが実行の様々なフェーズを通過する際に変化しやすく、個々のフェーズは異なる生存期間関数を要求する。
  • 異なるプログラムのページング特性は似ていないだろう。
  • 異なるプログラムは異なるページング特性を示すので、オペレーティング・システムは通常、等分配戦略を使用しない。控えめに言っても、異なる数の物理ページ・フレームが個々のプログラムに割当てられる。
  • それどころか、オペレーティング・システムはプログラムの一生の間にそのプログラムに割り付ける物理ページ・フレームの数を変化させる。よって、同時にメモリ内に収容することが出来るプログラムの数は時間とともに変化する。
  • メモリ内に収容出来るジョブの数は変化するので、割り込みスワッピングが使用されることもある。仮想メモリ・システム内のスワッピング方針は非常に複雑かもしれない。


 実際には、仮想メモリ・システムをスタディするために待ち行列ネットワーク・モデルを用いた解析は、我々が他の文脈で出会ったのと類似の均一性の仮定を設定することによりこれらの微妙さの多くを無視している。例えば、プログラムに割り付けられたページ・フレームの数の平均値しか考慮しないことや、この平均値は同じクラスに属する全てのプログラムについて同じであると仮定することや、この平均値がシステムの負荷とはほとんど独立であると仮定することは、よくあることである。そのような均一性の諸仮定を組み込んだスタディは一般に、メモリ・サブシステムの修正、例えばメモリの追加、の効果を予測することにおいてさえも成功する。次のセクションでは、そのような2つのスタディを考察する。


9.6.ケーススタディ」に続きます。