12.3.客の記述(1):Quantitative System Performance

12.2.情報のタイプと源泉(2)」の続きです。( 目次はこちら

12.3. 客の記述


 大部分の大規模コンピュータ・システムは数個の特定可能な要素を構成する作業負荷を持っている。性能スタディはしばしば個々の作業負荷要素の性能を評価しようとする。というのはスループット応答時間のシステム全体での平均値は、バックグラウンド・バッチやフォアグラウンド・トランザクション処理のようなさまざまな作業負荷要素を含むシステムではほとんど意味がない。システムの作業負荷要素を待ち行列ネットワーク・モデルの客クラスに割当てる仕方を決定する際に満たすべきいくつかの目標が存在する。

  • 同じクラス内の全ての客についてのモデルへの入力パラメータは同一であるので、サービス要求時間は比較可能な大きさでサービス・センターに渡って同様のバランスを持つような客からクラスは形成されるべきである。(例えば、I/Oバウンドの客は通常CPUバウンド客と同じクラスであるべきではない。)
  • それについて独立した性能予測をモデルの出力として望むような作業負荷要素をクラスは区別しなければならない。(例えば、もしデータベース・クエリへの応答時間が関心事であるならば、データベース・クエリは他の作業負荷要素と一緒に単一クラスにまとめられるべきではない。)
  • クラスはアカウンティングと性能のグループに従って作られることもある。アカウンティング・データはアカウンティング・グループ毎に整理されるので、これはさまざまなパラメータの値の計算を促進する。
  • クラスはさまざまな組織上の単位(例、会社の部門)によって生成される作業を区別するために使用されることもある。これは単位に特有の性能の予測を可能にし、のちの修正解析を促進する(作業負荷予測はしばしば組織上の単位をもとにして行われるので)


 客クラスを特定する最初のステップは、作業負荷がバッチ、端末、トランザクションのいずれによって最もよく表現されるかに従ってそれらの部分をグループ化することである。しばしば、作業負荷要素の性質が適切なタイプを提案する。すなわち、もし要求が一定のレートで到着するならばトランザクションであり、もしある要求を生成する前に別の要求のサービスの終了を待つようなユーザの集合によって要求が生成されるならば端末であり、もしアクティブな要求の数が一定であればバッチである。しかし、バリエーションは特に修正解析を行う際に可能である。一例として、ある作業負荷要素は実際には端末でのユーザから成っているが、計画の目的のためにその強度は要求到着レートで記述されるかもしれない。この場合、トランザクション・タイプの使用が適切であろう。別の例として、あるシステムが多くの作業負荷要素を持っているが、その中のわずかだけに興味があるとしよう。他の要素の存在はモデル内ではトランザクション・タイプの1個の「総体」クラスによって反映されるだろう(そのスループットが測定値と等しくなるよう保証するために)。
 客クラスの各々のタイプの内部での、作業負荷要素のさらなる分解が望ましいであろう。異なる特性のバッチ作業は個別のクラスとして表現されるだろう。異なる会話システム(例、IBM環境でのAPLとTSO)は別々の端末クラスとして扱われるだろう。もしささいなトランザクション(単純な編集コマンドのような)が実質的なトランザクション(複雑なデータベース・クエリのような)から区別出来るのならば、2つのグループを区別するために異なるクラスを用いることが出来る。
 待ち行列ネットワーク・モデルの入力パラメータCは単に客クラスの数であり、上に提案したガイドラインに従って決定される。単純なシステムのモデルは通常1つか2つのクラスだけを持つが、複雑な多目的システムのモデルは8つ以上を持つ。若干の特殊な状況では、非常に多数のクラス、例えば、20から40、を持つことが役に立つ。
 多数のクラスが使用される状況の一例は、多くの病院で使用されている病院情報システムの性能を予測するために開発されたモデルである。そこには約30の主要なトランザクション・タイプ(患者入場、血液検査のオーダー、食事制限設定、など)が存在し、その各々が個別の客クラスとして表現された。このようにして、個々のトランザクション・タイプの到着レートとトランザクション・タイプに割り付けた(特定の病院でのその緊急度を反映した)優先度をモデル内に直接表現することが出来る。システムを使用する病院は規模と、システムを稼動させるハードウェアの点でかなり異なっていた。また、それらは処理されるトランザクションの混合の割合でかなり異なっていた。モデルは構成の設計に役立つことが証明された。さまざまなトランザクション・クラスの応答時間はさまざまな計画されたハードウェア構成についてのクラスの到着レートと優先度に関係付けることが出来た。


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