12.5.2.I/Oのサービス要求時間の見積り(1):Quantitative System Performance

12.5.1.プロセッサのサービス要求時間の見積り」の続きです。(目次はこちら

12.5.2.I/Oのサービス要求時間の見積り


 現在の大部分のコンピュータ・システムにおけるI/O動作は、ダイレクト・アクセス・ストレージ・デバイス(固定ヘッドと、可動ヘッドと電子ディスク)上での操作が支配的である。テープI/Oとマス・ストレージ・デバイスとの間のデータ事前準備のためのI/Oは二次的な役割をはたす。他のタイプの周辺デバイスは通常、性能に関しては重要でない。このセクションでの議論はその重要さを反映してディスクI/Oに集中する。
 セクション10.7で我々はディスクサービス要求時間の部分(シーク、レイテンシー、回転、転送)の長さをシステムの知識(例、デバイス特性)と測定データからどのように定めることが出来るかについて説明した。我々は、個々のディスクでの個々のクラスの訪問回数と1訪問あたりのサービス時間の両方が既知であると仮定した。このセクションではこれらの数量を決定するための方法を提案する。最初に訪問回数を、次にサービス時間を考察する。
 我々はI/O操作の2つの見方を区別する。物理的I/O操作は周辺機器との間でデータを転送するためのI/Oサブシステム要素の起動に対応する。論理的I/O操作は情報のブロックへのアクセスを要求する客によるOSコールに対応する。多くの理由のために物理的I/O操作と論理的I/O操作は互いに直接には対応しない。時には、論理的I/O操作は物理的I/O操作をもたらさないかもしれない。例えば、論理的I/O操作はすでにメモリに存在する情報のブロックへのアクセスを要求するかもしれない。時には、論理的I/O操作はいくつかの物理的I/O操作をもたらすかもしれない。例えば、ブロックのリーディングやライティングの際検出されたエラーは操作のリトライを引き起こす。
 訪問回数に対応するのは物理的I/O操作であるが、物理的操作はめったにクラス毎にはレポートされない。通常、論理的I/O操作は(しばしばアカウンティング・モニタによって)クラス毎に分解されるが、デバイス毎にはされないが、一方、物理的I/O操作は(しばしばソフトウェア・モニタによって)デバイス毎に分解されるが、クラス毎にはされない。
 この状況に直面しての最初のステップは個々のクラスについて論理的I/Oに対する物理的I/Oの割合を見積もることである。我々は今、考察をディスク・ドライブの集合に制限する。P_kがディスクkでの物理的I/O回数を示し、L_cがディスクの集合におけるクラスcの論理的I/O回数を示すとしよう。(若干のモニタは論理的ディスクI/O回数を他の論理的I/Oから区別出来ない。そのような場合我々は、そのディスクに向かう全ての論理I/O回数の割合はそのディスクに向かう全ての物理的I/O回数の割合(これは測定データから利用可能であると仮定される)と同じであるというような若干の仮定を行うことを強いられる。)g_c をクラスcについての物理的I/O回数の論理的I/O回数に対する比であると定義しよう。(この比はクラスに依存するがデバイスには依存しないという仮定は大部分のシステムで現実的である。) g_cを見積ることはCPUの場合におけるf_c を見積もることと類似の問題である。可能な方法には以下のものがある。

  • g_cは個々のクラスについて同じであると仮定する。よって
    • g_c=\frac{\Bigsum_{all\;disks\;k}P_k}{\Bigsum_{all\;classes\;j}L_j}
  • そのシステムのアーキテクチャ上のファミリの標準タイプについての一般に受け入れられた比を用いる。
  • 多くの観測期間について、以下の一連の等式を最もよく満足するg_cの値を決定する。
    • \Bigsum_{all\;disks\;k}P_k(i)=\Bigsum_{all\;classes\;c}g_c{\times}L_c(i)
    • ただし(i)i番目の観測期間に得られた値を示す。


 一旦これらのg_cの見積もりがなされたならば、次に訪問回数を決定することに進む。本質的に、以下の方程式を満足しなければならない。

  • P_k=\Bigsum_{all\;classes\;c}(measured\;class\;c\;completions){\times}V_{c,k}
  • L_c=(measured\;class\;c\;completions){\times}\Bigsum_{all\;disks\;k}\frac{V_{c,k}}{g_c}


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