北欧神話と伝説

この本は私が高校生か大学生の時に購入し、のちにT君に貸したまま30年以上経ってしまった、という本が文庫になったもので、これを名古屋で見つけた時に(それは6月19日の目黒ブラックライオン飲み会の帰りのことですが)即決で買いました。
北欧神話については類書がないわけではないのですが、北欧の伝説のほうはなかなか他の本でお目にかかることがありません。名古屋の本屋でこの本をパラパラとめくっているうちに、もう30年も見ていなかった「テュルフィングの剣」や「スギョルド家とハドバルド家」のような物語に再会し、感激しました。どちらも何世代にも渡る一族の話であり、どちらも古ゲルマンの殺伐さと荒々しい気性に彩られた伝説です。

テュルフィングの剣

  • 鍛冶に巧みな小人たちによってテュルフィングという名の名剣が作られ、それがスヴァフルラーメという名の王の手に渡る。小人たちはその時に剣に呪いをかける。「剣は抜かれるたびに一人の男の死をもたらす。お前自身もそれによって死を受ける。」
  • スヴァフルラーメは剣の力によって勝利を重ねるが、最後はアルングリムに剣を奪われて、その剣で殺される。このアルングリムの一族が代々テュルフィングを受け継ぐことになる。まずアルングリムの次にテュルフィングを得たのはアルングリムの長男アンガンチュルだった。
  • アンガンチュルはバイキング戦士であり、ベルセルカー(狂暴な戦士)状態になることがあった。彼はスウェーデンのイングヴェ王を脅してその娘インゲボルグと結婚しようとした。イングヴェ王の配下の戦士ヤルマールが反対して立ち上がり2人は決闘するが共倒れとなる。
  • アンガンチュルが別の娘に生ませた娘はヘルヴォールと名づけられ、長ずると大変美しくなったが、気性が激しく、家を飛び出し男装し、ヘルヴァルドと名乗ってバイキングの仲間に加わった。彼女は父親アンガンチュルの墓(塚)に行く。その塚は炎に囲まれているのだった。ヘルヴォールは死せる父にテュルフィングの剣を請い、娘の勇気を喜んだアンガンチュルはヘルヴォールに剣を渡す。
  • やがてヘルヴォールはバイキング行をやめ、賢い男として評判なホーフンドと結婚した。2人にはアンガンチュルとヘイドレクの2人の息子が生まれた。アンガンチュルは父親に似て温和で思慮深かったが、ヘイドレクは争い好きであった。ホーフンドはアンガンチュルを、ヘルヴォールはヘイドレクをかわいがった。
  • ヘイドレクは自らが引き起こした揉め事のために父親のホーフンドから追放を言い渡される。母親ヘルヴォールは追放されるヘイドレクにテュルフィングの剣を与え、励ます。しかしテュルフィングの剣を抜いたヘイドレクはベルセルカーになり、兄のアンガンチュルを刺し殺してしまう。
  • 追放されたヘイドレクはレイドゴート国で手柄を立て、レイドゴート王の娘ヘルガと結婚する。2人からは息子が生まれ、アンガンチュルと名付けられた。しかし、あることがきっかけとなってヘイドレクはレイドゴート国を奪ってしまう。ヘルガは父の死を悲しんで自殺する。
  • その後ヘイドレクはフン族のフムレ王の娘シフカを捕虜にし、彼女によって息子フレードを得る。フレードはフン族の国で育てられた。その後、いろいろなことを経験してヘイドレクは剛毅で賢い王に成長していった。しかし、晩年に自分がバイキング行でとらえた捕虜たちによってテュルフィングの剣で殺されてしまう。息子のアンガンチュルは犯人たちを探し出して殺し、テュルフィングの剣を奪い返した。
  • フン族の国で育てられたヘイドレクの子フレードは、ヘイドレクが死んだと聞いて、その遺産をアンガンチュルと分割して相続することを要求する。しかしアンガンチュルの宮廷にいたギスール老人に侮辱されたために席を蹴ってフン族の国に戻り、兵を率いてアンガンチュルを攻める。ここにドウンヘーデでフン軍とレイドゴート軍は会戦し、戦いは8日間続く。ついにフン軍は壊走しアンガンチュルはテュルフィングを振ってフレードを倒す。アンガンチュルは弟の傍らに座り、自分たちの運命を嘆く。


長くなりましたので「スギョルド家とハドバルド家」は、またの機会に。