地獄変・戯作三昧 芥川龍之介

これは小学生の時に親が(頼んだわけでもないのに)買ってくれた旺文社文庫特製版50冊(?)の中の1つで、なぜ今まで持っていたのかよく分からない。高校生の頃は芥川が好きだったからその記憶があって捨てられなかったのだろうか? 特製版だけあってページの紙はいまだにしっかりしている。収録されているのは、地獄変戯作三昧芋粥、或る日の大石内蔵助蜘蛛の糸、枯野抄、藪の中、六の宮の姫君、だ。この中で戯作三昧と或る日の大石内蔵助はまだ読んでいなかったので読んでみた。戯作三昧は当時の人気作家としての芥川の日常の思いが表現されているようで(自分の作品に対する根拠のない批評に傷ついたり、無理解な愛読者にほめられたり、もっと書けという出版社との攻防など)おもしろかった。
高校の頃好きだったのは地獄変だった。
ここに収録されている小説は、どれも端正な出来だと思う。高校の頃の私はもっとせっぱつまった、鬼気を感じさせる芥川のほうに惹かれていたのを思い出した。「歯車」とか「蜃気楼」という作品を思い出す。「蜃気楼」はまた読んでみたい。(と思ったら、青空文庫に載っていた。)