不定個の同一分布独立確率変数の和の平均

同じ分布を持つ独立な確率変数がN個あり、それらをX_k(ただし1{\le}k{\le}N)で表すことにします。これらの確率変数の和を考え、それをYで表します。つまり

  • Y=\Bigsum_{k=1}^NX_k・・・・(1)

です。Nが固定の値である場合、Yの平均E[Y]を求めることは、「同一の確率分布を持つ独立な複数の確率変数の和の変動係数」に示すようにすれば出来ます。すなわち

  • E[Y]=NE[X]・・・・(2)

です。ただしE[X]X_kの平均であって

  • E[X]=E[X_1]=E[X_2]=E[X_3]・・・・・=E[X_N]・・・・(3)

です。
難しいのは、N自身が確率変数の場合です。この場合にE[Y]を求めることを考えてみましょう。ただし、一般の場合を考えるのは難しいので、NX_iと独立である場合について考えます。


N=nである確率をP(n)で表すことにします。N=nという条件におけるE[Y]は、式(2)から

  • E[Y]=nE[X]・・・・(4)

になります。ここでよく考えると式(4)のE[Y]N=nという条件における値ですから、Nの値の関数になっています。さらにNは確率変数ですから式(4)のE[Y]もまた確率変数です。そのことを表すためにE[Y|N]と表すことにします。すると式(4)はより正確には

  • E[Y|N=n]=nE[X]・・・・(5)

と書くべきであることが分かります。求めるべきE[Y]E[Y|N]の平均値と考えることが出来ます。つまり

  • E[Y]=E[E[Y|N] ]・・・・(6)

(この式が成り立つことをもう少し詳しく説明したものを「条件付き期待値の定理」に載せました。) この式(6)の右辺は

  • \Bigsum_nP(n)E[E[Y|N=n] ]

と書くことが出来ます。よって

  • E[Y]=\Bigsum_nP(n)E[E[Y|N=n] ]=\Bigsum_nP(n)nE[X]=E[X]\Bigsum_nP(n)n
    • =E[X]E[N]

よって

  • E[Y]=E[X]E[N]・・・・(7)

となります。