背教者ユリアヌス(下)
- 作者: 辻邦生
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1975/02/10
- メディア: 文庫
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ユリアヌスの軍は順調に東に進軍してきます。いよいよ両軍対決、という時になって、皇帝コンスタンティウスが崩御します。しかも死の直前に後継者としてユリアヌスを指名していました。こうして激しい戦闘ののちに得られると思っていた皇帝位が自然に転がり込んできたのでした。
皇帝に即位したユリアヌスには何かキリスト教を推し止めるためのあせりのようなものを感じさせます。古代ギリシアの神々への信仰を復活させる試みはあまりうまく行きません。そうこうするうちにペルシアと再び戦争になり、出陣するが戦場で矢を受けて死んでしまいます。
私は皇帝になってからのユリアヌスに(この小説の中のユリアヌスにですが)どうも共感が湧きません。私にとってのクライマックスはユリアヌスが陣中でコンスタンティウスの死と自分を後継者に指名したという知らせを聞くところです。最後にはユリアヌスを指名する、というところに彼の統治者としての理性を感じます。