ウィーナーが始めたサイボーグという考え
サイボーグという言葉はWikipediaによれば
サイボーグ(cyborg)は、サイバネティック・オーガニズム(Cybernetic Organism)の略で、広義の意味では生命体(organ)と自動制御系の技術(cybernetic)を融合させたものを指す。
とあり、
アメリカ合衆国の医学者、マンフレッド・クラインズとネイザン・S・クラインらが1960年に提唱した概念。当初は人類の宇宙進出と結び付けて考案された物である。又、この提唱よりも前にSF小説でこのアイディアは使用されていた。
とあるが、サイバネティクスという言葉を作った人物であり、私の偏愛する数学者にして科学思想家であるノーバート・ウィーナーは「サイボーグ」という言葉こそ使用していないがすでに1948年発行の主著「サイバネティックス」には、すでにサイボーグと呼ぶことの出来る考えが述べられている。それは運動機能と感覚機能を持つ義肢を作ることの提案である。
私がサイバネティックス的な考えかたによって、実際に役に立つようなことをやってみたいと思う分野が他にも二つあるが、その希望も今後の進歩をまたなければならない。そのうちの一つは、失くなった手足、あるいは麻痺した手足の補綴術である。・・・・・手足の一部の喪失は、単に支持物として役立っていたもの、あるいは手足の(切断後に残された)基部の先に機械的延長としてつながっていたものを失ったというだけでなく、それについていた筋肉の収縮力や、それから生ずる皮膚感覚や筋肉運動知覚も同時に失ったことになる。義肢製造者は、現状*1では、始めの二つの喪失物を義肢で代用させようとしているが、第三のものにはとても及んでいない。・・・・可動の膝やくるぶしがついていて、患者が残存した筋肉組織を使って前へ投げ出すようにして歩ける関節つきの義肢の場合は・・・患者は技師の関節の位置や運動がわからないから、でこぼこ道では確実な歩きかたは困難となる。人工関節や人工足の裏などに歪計や圧力計を備えつけ、電気的方法あるいはバイブレイターなどで残存した皮膚にそれを伝えるというようなことはできないはずはないであろう。・・・・適当な受容器を使用すれば、この運動失調も相当程度まで同時になおってしまい、患者はすべての健全な人間が自動車の運転の際に使うような反射作用を使えるようになり、その結果もっとしっかりした足どりで歩けるようになるであろう。・・・・
私はこれらの考察をその方面の適当な人に報告するためにまとめかけたが、現在まで*2のところ大して進歩していない。
「序章」よりウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)
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この考えは1964年のウィーナーの著作「神&ゴーレム社」では、人間が元々持っていない能力を機械によって人間に付与するところまで進んでいく。
こうして補綴工学という新しい分野が開ける。それには人間部分と機械部分との両方を含む混成的性質の系の製作が含まれる。しかし、この型の工学はわれわれが失った身体部分の代行のみに限られる必要はない。われわれが今日もっていない器官や、いまだかつてもったことのない器官の補綴もある。
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