M/G/1待ち行列の待ち時間分布の近似(2)

M/G/1待ち行列の待ち時間分布の近似(1)」の最後で得たM/G/1待ち行列の待ち時間の累積確率分布の近似式

  • F_q(t){\approx}1-u\exp\left(-\frac{2(1-u)t}{(1+c_e^2)t_e}\right)・・・・(9)

の妥当性を確認してみましょう。まずはM/M/1の場合です。この場合はc_e=1なので式(9)は

  • F_q(t){\approx}1-u\exp\left(-\frac{(1-u)t}{t_e}\right)・・・・(10)

となり、式(1)と一致します。よってM/M/1の時、式(9)は近似式として適切です。次にM/D/1の場合を調べてみます。この場合はc_e=0なので式(9)は

  • F_q(t){\approx}1-u\exp\left(-\frac{2(1-u)t}{t_e}\right)・・・・(11)

となります。この式は、以前も止めたM/D/1用の近似式(2)

  • F_q(t){\approx}1-u\left(\frac{u}{2-u}\right)^{t/t_e}・・・・(2)

と形の上では合っていません。では、どの程度、異なるのでしょうか? たとえばu=0.2, 0.5, 0.8の場合について式(2)と(11)の結果をグラフで比較してみると以下のようになります。

これらを見ると、式(11)と(2)は形は違っていてもほぼ同じ結果を示していることが分かります。さらに、「M/D/1待ち行列の待ち時間分布(1)」の最後に求めた累積確率分布F_q(t)の式(8)と(4)(ここでは番号を振り直して(12)と(13)とします。)

  • F_q(t){\approx}1-u\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}+2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k\left(\frac{t-(k-1)t_e}{t_e}\right)・・・・(12)
  • ただし
    • k=ceil\left(\frac{t}{t_e}\right)・・・・(13)

は、式(2)よりも精度の高い近似式ですが、これと式(11)と比較してみると

となり、式(11)が式(12)(13)のよい近似になっていることが分かります。そこで、式(12)(13)の近似式としては式(2)ではなく式(11)を採用することにします。以上のことからM/D/1の時も、式(9)は近似式として適切であることが分かります。


こうしてみると、式(9)はM/G/1待ち行列の待ち時間の累積確率分布の近似式として妥当なようです。