「待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式」の内容検討(7)

「待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式」の内容検討(6)』のつづきです。
今までの私の考察の大規模な見直しにはいる前に、E2/M/1待ち行列とD/M/1待ち行列でのbの値を求め、私の近似式

  • b=\frac{(c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u])u}{(1+c_e^2)-(1-c_a^2-c_e^2[c_a^2(1-u)+u-1])u}・・・・(8)

で計算した結果と、Wolfgang Kraemer氏とManfred Lagenbach-Belz氏の近似式

  • b=u+(c_a^2-1)u(1-u)h(u,c_a^2,c_e^2)・・・・(11)
  • ただし
    • h(u,c_a^2,c_e^2)=\frac{1+ac_a^2+bc_e^2}{1-u+cc_a^2+dc_e^2} (c_a^2{\le}1)・・・・(12-1)

で計算した結果を比較しておきます。


まずE2/M/1待ち行列の場合を考えます。この場合、「アーラン分布」の式(14)(ここでは番号を振り直して式(45)とします。)

  • c_a^2=\frac{1}{k}・・・・(45)

k=2となるので、

  • c_a^2=\frac{1}{2}・・・・(46)

となります。さてこの場合も『「待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式」の内容検討(4)』の式

  • b=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)t}{t_e}\right)g(t)dt・・・・(28)

が成り立ちますので、この式を用いてbを求めることが出来ます。g(t)は到着間隔の分布関数です。ここでは「アーラン分布」の式(1)(ここでは番号を振り直して式(47)とします)

  • g(t;k,\lambda)=\frac{\lambda^kt^{k-1}}{(k-1)!}\exp(-\lambda{t})・・・・(47)

k=2を代入して

  • g(t;2,\lambda)=\lambda^2t\exp(-\lambda{t})・・・・(48)

g(t)になります。式(48)における\lambdaをさらに決める必要があります。「アーラン分布」の式(10)によればこの分布関数の平均値は2/\lambdaになります。一方、到着間隔の平均はt_e/uですから

  • \frac{2}{\lambda}=\frac{t_e}{u}

よって

  • \lambda=\frac{2u}{t_e}・・・・(49)

これを式(48)に代入して

  • g(t)=\frac{4u^2}{t_e^2}t\exp\left(-\frac{2u}{t_e}t\right)・・・・(50)

となります。これでE2のg(t)を求めることが出来ました。
これを式(28)に代入すると

  • b=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)t}{t_e}\right)\frac{4u^2}{t_e^2}t\exp\left(-\frac{2u}{t_e}t\right)dt=\frac{4u^2}{t_e^2}\Bigint_0^{\infty}t\exp\left(-\frac{(1-b+2u)t}{t_e}\right)dt
  • =\frac{4u^2}{(1-b+2u)^2}\Bigint_0^{\infty}\frac{(1-b+2u)^2}{t_e^2}t\exp\left(-\frac{(1-b+2u)t}{t_e}\right)dt

ところで、最後の式の積分の中身は

  • \lambda=\frac{2u}{1-b+2u}

である2次のアーラン分布にほかなりませんから、それのゼロから無限大までの積分は1になります。よって

  • b=\frac{4u^2}{(1-b+2u)^2}・・・・(51)

となります。この式(51)を使ってExcelを用いてuをある値に決めた時のbの値を求めることが出来ます。その値を私の近似式(8)で計算した値と、Wolfgang Kraemer氏とManfred Lagenbach-Belz氏の近似式(11)で計算した値と一緒にグラフに書いて比較してみます。すると下のようになります。

ここからE2/M/1の場合は、どちらの近似式も同じくらいの精度を持っていることが分かります。