Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(35)

原文は

から入手出来ます。


5.3. 待ち行列長分布
 ここでは待ち行列分布の近似を開発する。近似手続きはセクション4.1の待ち分布のための手続きの離散版である。具体的には、すでに開発された近似、セクション5.1でのP(Q>0)、セクション5.2.1でのEC=\max\{1,EQ/P(Q>0)\}c_C^2の近似を用いてP(Q=k)に離散分布を合わせる。近似分布は0でかたまりP(Q=0)を持つ。k>0の時、P(Q=k)=P(Q>0)P(C=k)と置く。このセクションの残りはCの分布を正の整数上で近似することに充てる。
 KlincewiczとWhitt (1984)で行ったように、幾何分布を構成要素として用いる。それらは指数分布の離散版である。正の整数上でと非負の整数上で幾何分布を用いる。正の整数{1,2,3,....}上での幾何確率関数(PMF : Probability Mass Function)は

  • f(k)=p(1-p)^{k-1}k{\ge}1・・・・(5.13)

であり、裾野確率は

  • 1-F(k)=(1-p)^k ・・・・(5.14)

であり、平均1/p、分散(1-p)/p^2c^2=1-pである。非負の整数上の幾何確率関数は

  • f(k)=p(1-p)^kk{\ge}0・・・・(5.15)

であり、裾野確率は

  • 1-F(k)=(1-p)^{k+1}k{\ge}0・・・・(5.16)

で、平均(1-p)/p、分散(1-p)/p^2c^2=1/(1-p)である。単一のパラメータpは両方の幾何分布を特徴付ける。
 P(C=k)の場合、4つのケースがある。
 ケース1 c_C^2>1-(EC)^{-1}+0.02
 Cがバランスのとれた平均を持つ正の整数上の2つの幾何分布の混合として分布するとし、3つのパラメータp_1p_2\gammaECc_C^2に合い、かつバランスのとれた平均を持つように選択されるとする。つまり、

  • P(C=k)=\gamma{p}_1(1-p_1)^{k-1}+(1-\gamma)p_2(1-p_2)^{k-1}k{\ge}1
    • P(C>k)=\gamma(1-p_1)^k+(1-\gamma)(1-p_2)^k・・・・(5.17)

ただし、p_1=m_1^{-1}>p_2=m_2^{-1}(EC)/2=\gamma{m}_1=(1-\gamma)m_2、で

  • \gamma=[1+(1-2[c^2+1+(EC)^{-1}]^{-1})^{1/2}]/2・・・・(5.18)

(5.18)の\gammaは、c^2>(EC-1)とした場合の間隔\left(\frac{1}{2},1\right)内の解であることに注意しよう。しかし、ECが比較的小さい場合、あるいはEC<2の場合、p_1=2\gamma/EC>1であることが可能である。もしこの計算でp_1>1ならば、ケース2にスキップし単純な幾何分布を用いる。
 ケース2 |c_C^2-1+(EC)^{-1}|{\le}0.02
 (5.13)でp=1/ECであるような幾何分布をP(C=k)が持つとする。この場合c^2=(EC-1)/ECであり、よってc_C^2とかなり一致する。
 ケース3 [(EC)^2-1\/2(EC)^2畳み込みとして分布しているとする。その最初のものは非負の整数上であり平均はm_1=(1-p_1)/p_1{\ge}0であり、2番目のものは正の整数上であり平均はm_2=p_2^{-1}{\ge}1である。畳み込みの定義域が\{k:k{\ge}2\}になってしまうので、(5.13)のような正の整数上の2つの幾何分布を用いてはならない。同様に、非負の整数上の2つの幾何分布を用いてはならない。というのは畳み込みの定義域が\{k:k{\ge}0\}になってしまうからである。よって、両方を用いる。
 新しい近似分布の確率関数と裾野確率を

  • P(C=k)=\Bigsum_{j=0}^{k-1}p_1(1-p_1)^jp_2(1-p_2)^{k-j-1}k{\ge}1
  • P(C>k)=1-\Bigsum_{j=0}^kP(C=j)・・・・(5.19)

とする。ただし、x=ECc^2=c_C^2として、コンポーネント分布の平均は、

  • m_1=((x-1)-[(x-1)^2-2x^2(1-c^2-x^{-1})]^{1/2})/2
  • m_2=((x+1)+[(x-1)^2-2x^2(1-c^2-x^{-1})]^{1/2})/2・・・・(5.20)

よって、p_1=(m_1+1)^{-1}p_2=m_2^{-1}(x-1)^2-2x^2(1-c^2-x^{-1})が非負であるために、(x^2-1)/2x^2{\le}c^2{\le}1-x^{-1}でなければならず、これは指定される領域を決定する。
 例3 ケース3の手続きをここに示す。もしEC=4c_C^2=0.50ならば、(5.20)はm_1=1m_2=3をもたらし、よってp_1=1/2p_2=1/3で対応する分散は期待するように(1-p_1)/p_1^2+(1-p_2)/p_2^2=2+6=8である。
 ケース4 c_C^2{\le}[(EC)^2-1]/2(EC)^2
 この場合、あたかもc_C^2=[(EC)^2-1]2(EC)^2であるかのように見なしケース3を適用する。具体的にはp_1=(m_1+1)^{-1}=p_2=m_2^{-1}として(5.19)を用いる。ただしm_1=(EC-1)/2m_2=(EC+1)/2である。