平均待ち行列長の近似式の精度比較(3)

平均待ち行列長の近似式の精度比較(2)」の続きです。
この近似式はM/M/sの時は精度は比較的よかったのですが、D/M/sになるとサーバ数が大きい時に誤差が大きくなることが分かりました。ではM/M/sとD/M/sの中間にあたる(どちらかと言えばD/M/sよりですが)E4/M/sについて精度を調べてみます。この場合はc_a=0.25c_e=1となります。すると以下の表に示す結果となりました。正確な値としては「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」の表5(「Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(14)」参照)に出ているものを使用します。

予想通り、D/M/sより若干精度がよくなっています。上の表では誤差の絶対値が0.5以上のところを紫色に塗りました。


ではM/M/sを越えて、c_a>1の場合はどうでしょうか?
「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」では、c_a=2.25であるH2/M/mの場合の平均待ち行列長の正確な値が出ていました。この場合はc_a=2.25c_e=1になります。この場合の近似式と正確な値の比較をすると下の表のようになりました。正確な値としては「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」の表4(「Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(13)」参照)に出ているものを使用します。

この表でも誤差の絶対値が0.5以上のところを紫色に塗りました。サーバ台数8台でも誤差が0.5を越えるので近似式の精度はあまりよくありません。もっともこのくらいの精度である、ということを念頭に置いてこの近似式を用いるならば充分、現実の問題に役立つと思います。


それにしても、この平均待ち行列長の近似式

  • c_a{\le}1の時
    • L_q=\frac{c_a^2+c_e^2(u+(1-u)c_a^2)}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(8)
  • c_a>1の時
    • L_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(9)

s=1の場合、つまりサーバが1台の場合は、さまざまなc_ac_eの値に対してかなり高い精度を示しています。よって、課題はs>1の場合の精度を上げることだと分かりました。