平均待ち行列長の近似式の精度比較(4)
「平均待ち行列長の近似式の精度比較(3)」の続きです。
であるH2/M/sの場合の平均待ち行列長の正確な値と近似値の比較の表
についてさらに検討してみます。注目すべきことはの値が小さい時には精度が高いということです。の値が大きい時の精度を向上させるためにはどこを改善すればよいでしょうか?
H2/M/s待ち行列はGI/M/s待ち行列の一種であることを考えて、GI/M/s待ち行列について考察を進めます。
「GI/M/s待ち行列の到着時刻状態分布に向けて(2)」の式(15)(ここでは番号を振り直して式(1)とします)は
- ただし・・・・(1)
でした。ただしはジョブが到着した時、そのジョブを除いて個のジョブがシステム内に存在する確率です。または、待ち確率、つまり、ジョブ到着時にそのジョブが全ての装置が処理中であるのを見る確率、つまり待たなければならない状態である確率、です。
さて、もし個のジョブが存在するならば、到着したジョブの前に待っているジョブの数は個です。ですので、これらのジョブが全て処理開始になるまでの時間の平均値は
- ・・・・(2)
になります。一方、このジョブが到着した時点での、処理中の個あるジョブのうち1個が処理完了するまでの時間の平均値は、処理時間の分布が指数分布であることから、1個のジョブが任意の極小のの時間間隔に処理完了する確率は
- ・・・・(3)
よって個あるジョブのうちどれか1個のジョブが任意の極小のの時間間隔に処理完了する確率は、
- ・・・・(4)
です。よって、任意の時点から個あるジョブのうちどれか1個のジョブが完了するまでの平均時間は
- ・・・・(5)
になります。結局、到着したジョブの待ち時間の平均値は、今処理中の個のジョブのうちどれかが処理完了するまでの平均時間、式(5)、プラス、待っている個のジョブが処理開始されるまでの平均時間、式(2)、となり
- ・・・・(6)
となります。にかかわらないジョブの待ち時間の平均値は
- ・・・・(7)
となります。式(7)に(1)(6)を代入すると
ここで「補足」の式(2)(ここでは番号を振り直して式(8)とします)
- ・・・・(8)
を用いると
よって
- ・・・・(9)
であるので、平均待ち行列長は
よって
- ・・・・(10)
式(10)でとすると
- ・・・・(11)
式(10)(11)から
よって
- ・・・・(12)
となります。
今、検討している近似式はについては精度が高いので、が大きいときにの精度が低下する理由は
- ・・・・(13)
にあることになります。