GI/G/sのジョブ数の確率分布の近似式(6)
「GI/G/sのジョブ数の確率分布の近似式(5)」の続きです。
「GI/G/sのジョブ数の確率分布の近似式(1)」で
ここで、の時、
- ・・・・(1)
が近似的に成り立つと仮定します。この仮定の妥当性についてはのちに述べます。
と書きましたが、ここではその妥当性について述べます。
上記式(1)を仮定した根拠の1つはGI/M/s待ち行列では式(1)が成り立つということです。これについては「GI/M/s待ち行列の到着時刻状態分布に向けて(2)」の式(17)(ここでは番号を振り直して式(26)とします)
- の場合
- ・・・・(26)
を参照して下さい。この式から式(1)が成り立つことが分かります。残念ながら処理時間分布がM(=指数分布)でない場合は式(25)は成り立ちません。そういう意味では式(1)の根拠は物足りないです。しかし、の場合に大部分のについて式(1)が成り立ちます。それは「拡散近似(8)」の式(53)(ここでは番号を振り直して式(27)とします)
- ・・・・(27)
が示しています。ここではで定義された確率密度ですが、ここでは
- ・・・・(28)
で定義されます。は式(27)を得るためには無限大にしなくてはならないのですが、その無限大にするスピードには何か制約がありそうです(この点、私はまだ研究出来ていません)。いずれにせよ
- ・・・・(29)
です。が指数分布の形をしているのでもが大きいところでは指数分布の形になり、よって式(1)が成立します。これはの場合に式(1)が大部分のについて成り立つことを主張するものですが、ではの値が小さい場合には式(1)が成り立つ保証はないではないか、という反論が成り立ちます。しかし私はの近似値を出すためには式(1)を基礎にしてよいと考えています。それはの値が小さい場合にはの場合のの値は小さな値になるので誤差はあまりないだろうと予想しているからです。例えば、M/D/1待ち行列について式(1)を元にして近似した結果と厳密に計算した結果を「M/D/1の定常状態分布の近似式の精度」で比較しましたが、実用的には問題のない程度の誤差でした。
以上が式(1)がGI/G/sで近似的に成り立つということに対する私が示す根拠です。ただ、拡散近似を持ち出して説明した個所はよくこなれていないので、いつか再挑戦したいと思います。