【論文翻訳】M/D/s待ち行列の根とErlang、Crommelin、Pollaczekの業績に戻る(2)

1 導入
ポアソン到着と、固定のサービス時間とs 個のサーバを持つM/D/s待ち行列は、待ち行列理論に深く根ざした場所を持っている。それは全てA.K. Erlangの1917年の論文から始まった。そこで彼はM/M/s待ち行列(アーラン待ちモデル)とM/M/s/s待ち行列(アーラン損失モデル)と一緒にM/D/s待ち行列を導入した。3つのモデルは全て歴史的に大きな興味をひいてきており、特にM/D/s待ち行列は、指数サービス時間がないことによって起こる困難についての説明に役立つ。Erlangの先駆的な業績はPollaczek (1930a,b)とCrommelin (1932, 1934)によるM/D/s待ち行列についてのより正式な業績によって補完され、現代の待ち行列理論の基礎を築き、適用出来る数学的技法の価値を示した。
 Erlangはサーバ3個までについて定常待ち時間の分布の式を得ており、一方Crommelin (1932)は任意のs について定常待ち行列長分布の確率生成関数(pgf)を得た。それはz^s=\exp(\lambda(z-1)) の単位円の上または内部にあるs 個の根について表される。この確率生成関数からCrommelinは定常待ち時間分布を得ることが出来た。その2年前、Pollaczek (1930a,b)は2つの論文でM/D/s待ち行列を扱い、無限級数について結果を導いた。Pollaczekの仕事は、彼がむしろ複雑な解析に頼っているので読みづらかったため、Crommelin (1934)はM/D/sについてのPollaczekの理論の説明を与え、Pollaczekの結果と一致する自分自身の結果を見つけた。Pollaczekもまた、根に関する自分の無限級数についての別の式を見出した(Pollaczek, 1930b, 式(80)と(83)を参照)。
 今では待ち行列理論は、Erlangが創設者でありPollaczekが解析的モデルの主要な先駆者であると考えられるところの、応用数学の成熟した部門である。Pollaczekにとって、M/D/s待ち行列は、M/G/s、G/G/1、G/G/s待ち行列の調査を含む彼の印象的な結果の集積における最初の一歩にすぎなかった。Crommelinは待ち行列理論に生成関数の技法を導入した功績を認めるべきである。それは、組込み過程に関する解析を許す待ち行列(バルクサービス待ち行列や、M/G/1タイプとG/M/1タイプの待ち行列、それに離散あるいは離散時間待ち行列など)を含む多数の応用を見つけた。生成関数あるいは変形の技法は通常、非明示的に定義されたいくつかの等式の複雑な値の根に関する結果に帰着する。
 我々はこの数年に渡って得られた結果のいくつかの概要を与える。M/D/s待ち行列を含む待ち行列のクラスについて、これらの結果は、根の明示的な特徴づけと、フーリエ・サンプリングを用いた根に関する式からの無限級数、つまりPollaczekタイプの結果の導出と、平方根配置から得られた重負荷の結果、を含む。特に、我々は注意を、M/D/s待ち行列内の任意の客が待ちを経験しない(空の待ち行列に出会う)定常確率に限る。これ以降、この量をD(s,\lambda) で示し、これをErlang-Pollaczek-Crommelin D公式、略してアーランD公式と呼ぶことにする。
 この研究の若干は、I.J.B.F. Adan、O.J. Boxma、D.Denteneer、J.A.C. Resing、E.M.M. Winands、B.Zwartを含む同僚との協力によってなされ、あるいはそのおかげをこうむっている。