パターン認識(4)

パターン認識(2)」で示した単独ニューロンパターン認識の限界について、それがどのようなものであるかを調べるために、問題を簡略化して、横2マス×縦1マスの格子を考える。

  • 図11


この格子の場合、あり得るパターンは以下の4つである。

  • パターン1
  • パターン2
  • パターン3
  • パターン4


このうちパターン2と4の時のみ1を出力するようにニューロンを構成することは出来る。しかし、パターン2と3の時のみ1を出力するようにニューロンを構成することは出来ない。その理由を以下に示す。
左側のマスの値をx軸に、右側のマスの値をy軸に示すようにこれらの4つのパターンを図示すると

  • 図12

のようになる。ただし丸の中の数字はパターンの番号である。ニューロンはこの2マス格子の出力を入力とするので、このニューロンの出力をzとすると、マカロック・ピッツの式

  • z=1\left(\Bigsum_{i=1}^ns_ix_i-h\right)・・・・(9)
  • ただし、1(x)は階段関数で、
    • 1(x)=0   (x<0)
    • 1(x)=1   (x{\ge}0

から

  • z=1(ax+by-h)・・・・(10)

と書ける。ただしaは入力xの、bは入力yシナプス荷重である。この式からz=1になるのは

  • ax+by{\ge}h・・・・(11)

の場合であり、また、z=0になるのは

の場合であり、その境界は

  • ax+by=h・・・・(13)

であることが分かる。これは図11でいうと直線になる。さて、パターン2と4の時のみ1を出力するにはパターンを直線で

  • 図13

のように分ければよいので、これは可能である。しかし、パターン2と3の時のみ1を出力することは、1本の直線でパターン2、3とパターン1,4に分けることが出来ない。

  • 図14

よってパターン2と3のの時のみ1を出力するようにニューロンを構成することは出来ない。


以上は2マス、つまり2入力、の場合の話であるが、入力の数がもっと増えても考え方は同じである。入力がN個あれば、マカロック・ピッツの式(9)から、ニューロンの出力が1になるパターンのグループと出力が0になるパターンのグループの間には、シナプス荷重s_iしきい値hがいかなる値であってもN-1次元の超平面

  • \Bigsum_{i=1}^ns_ix_i=h・・・・(14)

を置くことが出来ることが分かる。


ところで2つのパターンのグループ間に超平面を引くことが出来る場合、このパターンのグループは線形分離可能と言う。逆に、出来ない場合を線形分離不可能と言う。この言葉を用いれば、1個のマカロック・ピッツのモデルのニューロンが持つパターン認識の限界とは、線形分離不可能なパターン認識が出来ないことである、と言うことが出来る。