線形代数学の復習:実対称行列は対角化可能である(2)

補題2】

実対称行列の固有値は全て実数である。
(証明)

  • Aが実対称行列であるとします。\alphaA固有値とします。すると固有値の定義からAx=\alpha{x}となるようなゼロベクトルでない固有ベクトルxが存在することになります。ただし、まだここでは、xが実ベクトルであるとは言えません。
  • ベクトルxy内積(x,y)
    • (x,y)=x^T\bar{y}
  • で定義します。ただしx^Txの転置を、\bar{y}y複素共役を表します。すると
    • (Ax,x)=(\alpha{x},x)=\alpha(x,x)・・・・(1)
  • となります。一方
    • (Ax,x)=(Ax)^T\bar{x}=x^TA^T\bar{x}・・・・(2)
  • となります。ここでAは対称行列なのでA^T=Aです。さらに実行列なのでA=\bar{A}です。よって(2)の右辺は
    • x^TA^T\bar{x}=x^T\bar{(Ax)}=x^T\bar{(\alpha{x})}=\bar{\alpha}x^T\bar{x}=\bar{\alpha}(x,x)・・・・(3)
  • となります。(1)(2)(3)から
    • \alpha(x,x)=\bar{\alpha}(x,x)・・・・(4)
  • となります。(x,x)の定義からx\neq{0}ならば(x,x)\neq{0}です。そしてx固有ベクトルなのでx\neq{0}です。よって(x,x)\neq{0}となります。よって(4)から
    • \alpha=\bar{\alpha}
  • となります。よって、固有値\alphaは実数であることになります。よって、実対称行列の固有値は全て実数であることが証明されました。