線形代数学の復習:実対称行列は対角化可能である(5)
ここまでで準備が出来たので、いよいよ実対称行列は対角化可能であることの証明を行います。
定理
実対称行列は対角化可能である
(証明)
が実対称行列であるとします。が対角化可能であることを数学的帰納法を用いて証明します。の次元をとします。
まずならば、もともとは対角行列なので、対角化可能と言えます。
次にとし、次元がより小さいときにはが対角化可能であることが証明出来ているとします。の固有値をとします。の固有空間の実ベクトルからなる正規直交基底をで表すことにします。すると明らかにです。もしならば補題5より、対角化可能であることが明らかです。なので[tex:r
となるような直交行列が存在することになります。の次元はより小さいので、数学的帰納法の仮定によりが対角行列となるような次直交行列が存在することになります。ここで
とおけば、
となって、も も対角行列なので、が対角化されていることが分かります。つまりはで対角可能です。
以上から数学的帰納法により、実対称行列が対角化可能である、ことが証明されました。
なお、は直交行列になります。このことを見ておきます。まず、
となります。よって
となります。ここでを列ベクトルの並びと考えてとするとから
となるので、これは、(ただし、、、)であることを表しています。このことからは正規直交系であることになりますので、は直交行列になります。