中世ローマ帝国

この本は前日の本「コンスタンティノープル千年」の姉妹本です。「コンスタンティノープル千年」を読んでビザンチンの歴史に興味を持った私は次にはこの本を買いました。この本は「コンスタンティノープル千年」より学問的になっていてその分読みづらく感じたのですが、「第四章 ローマ領シリアにおけるオリーヴ・プランテーション村落の興廃」は、いきなり別世界に読者を連れ去る叙述で魅せられました。何か劇的なことが起こるわけでないのですが、非常にリアリティを感じました。
もうひとつおもしろかったのは、西ローマ帝国滅亡の真相を記したところです。滅亡といわれるものがまったく劇的でなかった、というものです。

ローマ没落論の非神話化
ローマ帝国は本当に亡びたのであろうか。たしかにロムルス・アウグストゥス−−若輩ゆえに同時代人によって小アウグストゥス、つまりアウグストゥスとよばれた−−は476年に廃位されたが、それは、その頃イタリアのローマ軍隊、だが実態はゲルマン人から成る傭兵隊の、そのリーダー格であったオドワケルによって、兵士たちの土地割当ての要求をみとめない実力者の父オレステースが殺される巻添えをくらってであった。もっともこの若僧、助命されたうえ、カンパニアに居所を与えられて、年金6000ソリドゥスをはむ年金生活者として余生をおくることができたとは、冥加につきるラッキーボーイであったといわなければならない。