リトルの法則をめぐって

Factory Physicsの内容紹介という目的からははずれますが、リトルの法則について私が気づいたことをご紹介します。

複数製品が流れるラインでのリトルの法則

  • リトルの法則では、「平均CT(=平均サイクルタイム」が登場します。暗にこれはラインの中に製品が1つしか流れていないことを言っているような雰囲気があります。しかし、サイクルタイムの異なる複数の製品がラインの中を流れることはよくあることだと思います。その場合、リトルの法則はどのような形になるでしょうか? リトルの法則の証明でご紹介した証明の流れをたどっていけば、それら複数の製品に属するジョブ全てについてCT(=サイクルタイム)の平均をとり、TH(=スループット)の平均をとれば、ラインの平均WIPとの間にリトルの法則
    • (平均WIP)=(平均CT)×(平均TH
  • の関係が成り立つことが分かります。
  • さらに、個々の製品について同様に考えれば、個々の製品毎にリトルの法則が成り立つことが分かります。つまり製品iの平均サイクルタイムCT_i、平均スループットTH_i、その製品の平均WIPWIP_iとすると、これらの間に
    • WIP_i=CT_i\times{TH_i}
  • が成り立ちます。

リトルの法則は非常に広い対象に適用できる

半導体ファブにおいて
    • 話は少し変わりますが、半導体ファブ内のジョブ(=ロット)は、保管中、搬送中、装置上の主な3つの状態があります。さらに装置上の状態は、装置上での待ち状態と処理中状態に分けることが出来ます。(細かく考えればもっとありますが、ここでは簡単にするためにこの4つに限定します。) もし、このファブが安定した状態で稼働しているとするならば、ある期間、定期的に、保管中のロット数、搬送中のロット数、装置上で処理中のロット数、処理中でない(装置上で待っている)ロット数を数え上げ、その平均を取って、全体のWIPに対する各々の割合を求めれば、ロットのサイクルタイム(=TAT)の内、保管中の時間、搬送中の時間、装置で処理中の時間、装置上での待ち時間の割合が分かります。これもリトルの法則の応用です。(どのようにリトルの法則を用いたかは、ジョブのサイクルタイムにおける各状態の割合の推定をご覧下さい。) 実際にこれを計算すると、サイクルタイムの内、処理時間の割合が小さいことが見えてくるのではないでしょうか?、そしてストッカなどでの待ち時間や装置のロードポート上での待ち時間が大きいことが見えてくるのではないでしょうか?
ウェハ観点からの生産性の評価
    • さらに、ジョブとしてロットではなくウェハを考え、上記各状態のウェハ数を数えて割合を求めると、待ち時間がもっと大きな割合を占めていることが見えてくるのではないでしょうか? つまり、観点をロットからウェハに移すことによって、キャリアの中でのウェハの待ちがクローズアップされてきます。この話はSEMIスタンダードのSEMI E124 - Provisional Guide for Definition and Calculation of Overall Factory Efficiency (OFE) and Other Associated Factory-Level Productivity Metricsに話がつながっていきます。この話ものちに議論していきたいと思います。