天皇と日本の起源 遠山美都男

天皇と日本の起源 (講談社現代新書)
またしても遠山さんの本です。氏のファンなので買いました。私にとって天皇という存在は謎です。日本における大きな謎と思っています。
 さて、この本はそれまでの著者の本の集大成といった感があります。扱っている時代は推古天皇から持統天皇までの時代で、その間に飛鳥の地がどのように何の目的で開発され、それが王権の伸張と国家の確立にどのように関わっていたのかを述べています。ただ、残念なのは、時代がめまぐるしく移り変わり、主要な登場人物だけでも多数にのぼり、物語としての全体像がよくつかめない点です。物語としてのおもしろさは、同じ著者の他の本のほうが勝ると思います。
 一点、印象に残ったのは、日本書紀の記述に基づきながら、蘇我蝦夷の人間味を取り出して見せたところです。