この本も古くに買った本で、今回、読み直してみたらページがはがれそうになりました。調べてみると昭和54年(1979年)発行でした。この本はよく読み、愛着のある本です。この本で「二つの
出雲神話」というのを知りました。
記紀に書かれている
出雲神話と、
出雲国風土記に書かれている
出雲神話が、非常に異なっているということです。それを著者は「二つの
出雲神話」と呼んだのでした。例えば、
記紀に見える
スサノオのミコトの
ヤマタノオロチ退治の話は
出雲国風土記には出て来ないですし、その代わり
出雲国風土記には
ヤマタノオロチに似た名前の「越の八口」が登場します。でもそれを退治するのは
スサノオではなくオオナムチ(
オオクニヌシ)です。
風土記に出てくる国引きの話の主人公ヤツカミズオミヅヌのミコトは
古事記では名前が出てくるだけです。私は、この本で
記紀神話以外にも日本神話が存在するのだ、ということを驚きをもって知ったのでした。しかし
風土記は神話を物語ることが第一目的で編纂された書物ではありません。郡や郷の名前の由来などを述べるのが目的の書物です。そのため、神話は様々な地名の由来の中に断片的に述べられているに過ぎません。この著者は
記紀神話や、後世の伝説、地名や神社名などと対照して、その中のいくつかの物語を蘇らせています。
しかし、失われた物語も多かったことが察せられます。ウムカ姫がホホキドリ(ウズイス)に化した、という話が
風土記に出ていますが、
神魂命御子、宇武加比売名、法吉鳥化而飛度、静坐此処、故云法吉(カムムスヒのミコトの御子、ウムカヒメのミコト、ホホキドリとなりて飛びわたり、ここに静まりましき。かれホホキといふ。)
きっとこれは何か大きな物語の一部なのでしょう。「失われた神話」というのは私の興味の1つです。