ロットサイズ縮小によるバッチ待ち時間バッチ内待ち時間短縮効果の再考

19日のロットサイズの中で、サイクルタイム短縮効果について、あまり数学的に正確に書かなかったので、ここで補足します。短縮されるのは、

  • サイクルタイム=搬送時間+キュー時間+セットアップ時間+処理時間+バッチ待ち時間+バッチ内待ち時間+部品待ち時間

のうちのバッチ待ち時間バッチ内待ち時間です。一方、搬送時間は逆に増加する傾向にある、ということでした。ここではロットサイズ縮小によるバッチ待ち時間バッチ内待ち時間の短縮の効果を数式で表わしたいと思います。ロットサイズで述べましたようにこの2つの時間は同じなのでまとめてキャリア内待ち時間という用語で両者を足した時間を表わすことにします。
ロットサイズがn、装置のタクト時間t_0であれば、ロットサイズで述べた議論をそのままなぞって考えて、キャリア内待ち時間CT_{wc}

  • CT_{wc}=(n-1)t_0

であることが分かります。もしこの装置が

のような処理時間にオーバーラップがないのであれば、タクト時間t_0は処理時間t_pに等しいので、「キャリア内待ち時間」と処理時間を含めた時間CT_{cp}

  • CT_{cp}=CT_{wc}+t_0=(n-1)t_0+t_0=(n-1)t_0+t_0=nt_0

となります。そこで、nを半減すれば、CT_{wc}も半減することが分かります。昨日のバッチサイズで引用した「ザ・ゴール」の文章で

バッチサイズを半分にすれば、各バッチの処理時間も半分になる。

というのは(「ザ・ゴール」ではこの処理時間の中に上記のキャリア内待ち時間を含んでいますので上記のCT_{cp}に当たることから)正しいことが分かります。しかし、もしこの装置が

のような処理時間にオーバーラップのある装置であれば、タクト時間t_0は処理時間t_pより小さいので、

  • CT_{cp}=CT_{wc}+t_p=(n-1)t_0+t_p=nt_0+(t_p-t_0)>nt_0

となり、上記の

バッチサイズを半分にすれば、各バッチの処理時間も半分になる。

という言明は正しくないことが分かります。よって、「ザ・ゴール」にある上記の言明は、オーバーラップのない装置に限定して述べたものと理解することが出来ます。

議論の継続

ここでの議論は、以下の一応の結論に利用されます。