蛮族の侵入

蛮族の侵入―ゲルマン大移動時代 (1974年) (文庫クセジュ)

蛮族の侵入―ゲルマン大移動時代 (1974年) (文庫クセジュ)

この本はゲルマン民族の大移動を扱っていますが、フランスで出版された本のせいか、この歴史的事件を「ゲルマン民族大移動」とは呼ばず「蛮族の侵入」と呼んでいます。それは、フランスはラテン文化圏ということで、かつてのローマ帝国の立場にあるかのように、この歴史的事件を「蛮族の侵入」と呼ぶのを好むようです。しかしそもそも「フランス」という国名自体がゲルマン民族の一派である「フランク族」から来ているのであれば、それほどローマと同一化することもあまり根拠がない、とも思えます。フランス人にはローマ文明の後継者という意識があるのでしょう。
この本は民族大移動と西ローマ帝国の滅亡の歴史を物語っています。それはローマ史に属する物語であるとともに、のちのニーベルンゲンの歌に結実していくゲルマン伝説のもとになった史実の物語も含まれています。今回この本を読み直して、私はこの本をよく読んでいなかったことに気がつきました。また、機会を見つけて読み直したいと思っています。