宇宙の中の飛び地

三上さんの大学での講義に連動した記事「情報文化論2007 第3回 人間の誕生と意味の発生」を読んで、ウィーナーの「人間機械論」(原題:人間の人間的な利用)

人間機械論―人間の人間的な利用

人間機械論―人間の人間的な利用

の「まえがき」を思い出しました。以下に引用します。

 エントロピーが増大するにつれて、宇宙、および宇宙内のあらゆる閉じた物質系は、自然に質が低下し筋目を失ってゆき、確率の小さな状態から大きな状態へ、すなわち組織性と分化性をもち区別と形態が存在する状態から、混沌とした一様な状態へ転化してゆく。ギッブズ(CUSCUS注:ウィラード・ギッブス:アメリカの数学者、物理学者。統計力学の建設者の一人)の宇宙では、秩序は確率が最小で、混沌は確率が最大である。しかし、もし宇宙全体というものがあるとすれば、その宇宙全体は混沌へ転じてゆくにせよ、全体としての宇宙とは逆の向きに変化してゆくような局部的な飛び地がいろいろ存在し、その中では組織性がある限度で一時的に増大してゆく。生命はこれらの飛び地のどれかに住む。こういう観点を核心にしてこそ、サイバネティックスという新科学の発展が始まるのである。

 ウィーナーの意気軒昂たる記述です。サイバネティックスという言葉は今では蒸発してしまった言葉ですが、当初はこのような広範囲な問題設定をしていました。