ロットサイズとCeの関係(セットアップを考慮しない場合)
- 「ロットサイズとキュー時間の関係」での議論を受けて、セットアップを考慮しない場合の、ロットサイズと装置処理時間の変動係数の関係を調べます。
- この装置処理時間をタクト時間と考えてよいことについては「ロットサイズとteの関係(セットアップを考慮しない場合)」での議論を参照して下さい。以下、装置処理時間をタクト時間として議論を進めます。
簡単な例
- ロットサイズ(=バッチサイズ)が1ウェハの場合と2ウェハの場合を考察するとします。また、1ウェハあたりのタクト時間は1分か2分のどちらかであるとします。そしてタクト時間が1分である確率が50%、2分である確率が50%とします。
- ロットサイズを1ウェハとすると、1ロットあたりのタクト時間とその発生頻度は、
- 1分 50%
- 2分 50%
- となります。ここから、平均と標準偏差を計算すると
- 平均:1.5分
- 標準偏差:0.5分
- となります。よって、この場合のロットのタクト時間の変動係数は
- 変動係数:0.333
- となります。次に、ロットサイズを2ウェハとした場合を考えます。このときの1ロットあたりのタクト時間とその発生頻度は
- 1枚目のウェハが1分、2枚目のウェハも1分 で計2分 25%
- 1枚目のウェハが1分、2枚目のウェハが2分 で計3分 25%
- 1枚目のウェハが2分、2枚目のウェハが1分 で計3分 25%
- 1枚目のウェハが2分、2枚目のウェハも2分 で計4分 25%
- となります。ここから、平均と標準偏差を計算すると
- 平均:3分
- 標準偏差:0.707分
- となります。よって、この場合のロットのタクト時間の変動係数は
- 変動係数:0.236
- となります。つまり、ロットサイズが2から1に半分にすると、タクト時間の変動係数は
- 0.333/0.236=1.414
- 1.414倍に増えることがわかります。よってロットサイズが小さいとタクト時間の変動係数は増えることになります。
もう少し数学的に
- 各ウェハを処理するタクト時間を同一の確率分布を持つ独立な確率変数と考えることが出来るならば、上の問題は、同一の確率分布を持つ独立な複数の確率変数の和の変動係数を求める問題になります。この問題の結論は、同一の確率分布を持つ独立な確率変数を個足した変数の変動係数は、もとの確率変数の変動係数の1/になるというものです。
- これの証明については「同一の確率分布を持つ独立な複数の確率変数の和の変動係数」を参照下さい。
- これを応用すれば、ウェハ1枚を処理するタクト時間の変動係数を、ロットサイズを、ロットのタクト時間の変動係数をとすると
- となることが導かれます。これでロットサイズとの関係が明らかになりました。
議論の継続
- この結果は、「ロットサイズとキュー時間の関係(セットアップを考慮しない場合)」で利用されます。