処理時間のオーバーラップがある場合のロードポートネック

ロードポートネック」では、「装置でのロットの処理時間にオーバーラップがない」という仮定を置きました。今度は、この仮定を取り除いた場合を含むようにロードポートネックの判定式を拡張したいと思います。ロードポートネックの判定式は「キャリア交換時間CET」ですでに拡張された、

  • CET\le{(LP-1)t_e} ならば
    • u_{\rm{max}}=1
  • CET>(LP-1)t_e ならば
    • u_{\rm{max}}=\frac{LP\times{t_e}}{t_e+CET}

をさらに拡張することにします。オーバーラップしない処理時間、つまりタクト時間t_eと再定義します。そしてオーバーラップする処理時間(これを「オーバーラップ処理時間」と呼びます。「ステーション・サイクルタイムの構成要素」参照)をt_{\rm{ol}}で表すことにします。そうすると、例えばロードポート数LPが2の場合のガントチャートを書くと以下のようになります。

  • ロードポートネックにならない場合
  • ロードポートネックになる場合

これらからt_{\rm{ol}}CETに加算されるように作用することが見てとれます。よってロードポートネックの判定式は

  • CET+t_{\rm{ol}}\le{(LP-1)t_e} ならば
    • u_{\rm{max}}=1
  • CET+t_{\rm{ol}}>(LP-1)t_e ならば
    • u_{\rm{max}}=\frac{LP\times{t_e}}{t_e++t_{\rm{ol}}+CET}

となります。ただしここで装置の利用率としてはオーバーラップしない部分の利用率を採用し、u_{max}はその利用率の最大値を意味しています。上の図のうち「ロードポートネックになる場合」の絵は、装置全体として見れば確かに100%の利用率になっていますが、その装置のキャパシティを使い切っていない、という意味で、ロードポートネックが発生している、と定義づけしました。
これで、ロードポートネックの判定式を、処理時間にオーバーラップのある装置にも拡張することが出来ました。
この式から言えることのひとつは、

  • もしt_{\rm{ol}}>(LP-1)t_eならば、どんなにキャリア交換時間CETを小さくしてもロードポートネックになる。

あるいは

  • もしt_{\rm{ol}}>(LP-1)t_eならば、ロードポートネックの原因は搬送システムではない

ということです。装置のモデルをウェハ処理をベースにしたものに修正して考えると、上の意味するところは、よりよく分かると思います。それについては「枚葉装置モデルにおけるロードポートネック」を参照下さい。