【定理10】

搬送時間が変動する場合への定理の拡張を試みて」での考察を続けます。目標は以下のことです。

  • もしCETの全ての実現値についてCET\le{(LP-1)t_e}ならば、搬送時間ありのG/D/1のモデルのサイクルタイムについて、どんなことが言えるのか?

搬送時間が一定の時のようにg(u)=f(u)+TU+TLはもはや成り立たないのは「搬送時間が変動する場合への定理の拡張を試みて」での議論で明らかです。
まず、個々のロットのガントチャートにおいてTL(ロットがストッカからロードポートに搬送される時間)がそのロットの先頭に来る場合と、そうでない場合があることに注目します。

先頭に来る場合は、つまりストッカでの待ちがなかったということです。先頭に来ない場合は、ストッカで待ちがあった、ということです。このロットをロットiと呼ぶことにします。i番目にストッカに到着したロットということです。このロットのストッカへの到着時刻をA_iとします。また、ロットiのTLの開始時刻をLS_i、終了時刻をLE_iとします。また、ロットiがロードポートに来る時のキャリア交換時間をCET_iとします。

  • (キャリア交換は2つのロットが関係するのですが、ここでは、新しくロードポートに来るロットのほうの添字をCETの添字とすることにします。)

ロットiがストッカで最初待っていて、次に

  • LS_i

の時にロードポートに向かい始めた、ということはキャリア交換を行ったということです。このキャリア交換は時刻

  • LE_i

に完了していますので、キャリア交換が始まったのは時刻

  • LE_i-CET_i

です。この時にロードポート内の1つのロットが処理を完了し、他のLP-1個のロードポートは全て処理前のロットを持っているはずです。さもなければ、ロットiはもっと前にロードポートに向かったはずだからです。
とすると、これらのLP-1個のロットの処理が完了するのは

  • 時刻LE_i-CET_iから(LP-1)t_e

です。(ここにt_eは装置の処理時間です。) つまり時刻

  • LE_i-CET_i+(LP-1)t_e

です。これらLP-1個のロットの処理が全て終了するのとロットiがロードポートに到着するのはどちらが早いでしょうか? ここでCETの最大値CET_{max}について

  • CET_{max}\le{(LP-1)t_e}

なので、

  • CET_i\le{(LP-1)t_e}

よって、

  • (LP-1)t_e-CET_i{\ge}0

よって

  • LE_i-CET_i+(LP-1)t_e{\ge}LE_i

つまり、LP-1個のロットが処理完了する時刻のほうがロットiがロードポートに到着する時刻より遅いか、せいぜい同時である、ということです。いずれの場合も、ロットiの処理開始時刻がその1つ前のロットの処理終了時刻と等しくなります。ロットiの処理開始時刻をS_iをその1つ前のロット(ロットi-1)の処理終了時刻をE_{i-1}で表すと、

  • S_i=E_{i-1}

となります。ここから以下の定理が言えます。

【定理10】:CET_{max}\le{(LP-1)t_e}の時、もしロットiのTLが先頭に来ていないならば、S_i=E_{i-1}である。

議論の継続

この【定理10】は【定理12】で使用されます。また、ここで述べた前提は【定理11】【定理12】【定理13】【定理14】で使用されます。