「トラップされている」ということ
「サイクルタイム定理のさらなる拡張を試みて」での考察を続けます。
「サイクルタイム定理のさらなる拡張を試みて」で出てきた図2
のように、あるロットがすでにある装置のロードポート上にあるために、別の装置が空いているのにそのロットがその空いている装置に行けない状態(図2でのロットbの状態)や、
のように自分より後から到着したロットが先に処理されてしまう(ロットcはロットbよりあとに到着したのに、装置1がもたもたしているので装置2に割り付けられたロットcのほうがロットbより先に処理を開始してしまう)状態を、そのロットがトラップされている(わなにかかっている)と表現することにします。トラップされている、というのは要するに、そのロットが装置を決めてしまうのが早すぎる、ということから起こります。つまり、普通のG/G/mの待ち行列
では、待ち行列が1本だけなので、装置が空いた時点で初めてロットが選ばれて装置で処理されるわけですが、これに対してロードポートのある待ち行列
では、途中から装置専用の待ち行列に並ぶので、そのロットが処理されるよりずっと前に、ロットが装置に割り付けられてしまいます。そのままその列に並んで処理される順番が来るまで待っているうちに、別の装置が空いたり、あるいは自分より後から来たロットが先に処理されたりすることが発生するわけです。
- 似たようなことがスーパーのレジに並ぶ時によく起きます。
上の図2、図2aに示しましたように、「トラップされている」状態は2通りあります。
- あるロードポートあり(搬送時間なし)のモデルで図2の状態で「トラップされている」ロットが存在するならば、そのモデルとG/G/m待ち行列を同じ装置利用率で比較すると、そのモデルがG/G/mよりも長いサイクルタイムを持つことは明らかです。
- しかし図2の状態が発生せず、常に図2aの状態の「トラップ」のみしか発生していないのであれば、個々のロットのサイクルタイムに変動はあるでしょうが、モデルの平均サイクルタイムはどうなるのでしょうか?
議論の継続
「装置処理時間が一定ならばトラップされたロットはない(1)」につづきます。